6万打記念小説

□譲れない闘い
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ゼロスは今、後悔をしていた。
何も考えずにその扉を開けてしまった事を。








……と、言ってもその扉の向こうはゼロスが今現在寝泊りをしている部屋であり、また共に過ごすガイ・セシル事、伯爵家と賜るガイラルディア・ガラン・ガルディオスとギルド所属だと言うユーリ・ローウェルという2人の部屋である。
それでどうしてゼロスが後悔する事になったかと言えば。


「あー………なしたのよ?2人とも……」

扉を開けば、ここはガレット森林区にでも迷い込んだのかと思うくらいの寒気。
一度扉を閉めてしまいたい衝動に駆られたも、開けた瞬間に2人の視線が己の方を向き、まるで射殺すかのような視線を送ってきたので一瞬行動が止まってしまったのだ。

そして、そのままこちらに向いたままの視線。
居心地の悪さにゼロスは無理矢理笑みを浮かべて2人に問いかけるしかなかったのである。





























『譲れない闘い』















「あぁ……ちょっと、話し合いじゃあ片のつかない話し合いになっちまってな、悪いなゼロス、不安にさせちまったか?」

最初に顔に笑みを浮かべたのはガイの方。
壁に寄りかかりながら腕を組んでいた姿勢はそのままにゼロスに言葉を掛ける。


「あー……うん?」

しかしゼロスは知っている。
今のガイがものすごく機嫌が悪い事を。
一緒に過ごすようになってゼロスはガイの性格を知ることになった。勿論それはユーリにも当てはまり。ユーリも床に腰をおろし片足だけ立てた状態で此方を見ていて決して機嫌がいいとは言えない。
だが、ユーリはいい。
機嫌が悪いと言ってもいつも分かりやすいし、直ぐになんだかんだと言って昇華出来るし当たらない。

ガイは……。


「どうした、ゼロス?」

いつもゼロスがやるような、表面だけの笑み。
神々しいまでの後光が見える様な気がしてゼロスはヒクリと口元を歪めた。
これは、まずい。

何がまずいかなどゼロスには分からない。
だけど、全神経がゼロスに逃げろと命令していた。それほどまでの危機感を与える笑みだった。

「ゼロス、ちょっとこっちに来い」

「嫌」

「………ゼロス?」

「嫌!!行きたくない!!すっごく嫌な予感がびしばしする!!」

そこでユーリに指でこっちに来いと言われてもゼロスは従う気は毛頭も起きず、速攻でユーリの言葉を否定した。
途端にユーリの顔に皺が寄るが知った事ではない。
後ろの扉の逃走手段を確実に確保しながらゼロスは首を横に振った。

「だって、ユーリ」

くすくすと笑いながらガイは後ろの壁から身体を離した。

「じゃあ、こっちに来てくれるよな?」

「……い、いや」




そして、笑みを浮かべたままに近寄ってくるガイ。


3人で過ごすのに、それなりにな部屋ではあるが(ゼロスやガイの持つ部屋に比べたら狭いにもほどがあると言える部屋だが)ガイが数歩歩けば直ぐにゼロスの元に辿りつける。
一歩。その足が前に出た瞬間、何を自分がしたと言うのか分からないがゼロスは全力で後ろを振り返りドアノブに手を掛けたのである。





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