光と闇

□武器は酒と涙と色気です
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※双子(姉弟)設定かつイエガーとシュヴァーンは親友な設定になります。
それで良ければどうぞw
シュヴァーン総受けでイエ→シュ風味です。










「どうすれば……イエガーと戦わずに済むのだろうか…」

そう口にするのはザウデに向かうバンエルティア号の中。ユーリ一行の影響力でシュヴァーンも自分の死と生に立ち向かう事にしたのはつい最近の事。
そうして世界を見れば、次に思うのは己と一緒に駒のように働いていたもう一人の男。
それでもレイヴンの所属したギルドの……ユニオンの統領を殺す事のきっかけを作ってしまった男だ。

だが、シュヴァーンにとってはこの十年、ギルドに消えたレイヴンの代わりに傍にいてくれた人間であるし、この最近もこっそりながらもレイヴン達を助けてくれていた。
その事はシュヴァーンも知っていた。
だからこそ、先に死に向かったシュヴァーンに「向こうで会おう」と寂しげに声をかけて来た相手を忘れられずにいたのだ。

「ねぇちゃん……」


その姿を見ていてレイヴンは心を痛めた。

昔から、シュヴァーンとイエガーと、キャナリが仲が良かった事を知っている。
だからこそ、ドンを殺すきっかけを生み、そしてこれから立ち向かってくるだろう相手を思って一人、辛そうな顔をする姉の姿にレイヴンはいたたまれなかったのだ。
今までずっと、楽しい事も、嬉しい事も感じる事が無く痛みや辛さだけを抱えて生きていた姉に少しでも、そう考えてはいたものの、この場で10年以上付き添った上司に立ち向かうだけではなく長年支えてくれた親友とも刃を向け殺さなくてはいけない。
それはきっと、彼にとってはこの先辛すぎる未来を生むに違いが無いのだ。



船の柵に腕をかけ、体重をかけて黄昏る姿は、騎士団でナンバー2を誇る強さと威厳を持つ姿には見えない。
儚げで、触れたら崩れそうな姿は支えてやりたくなるのだ。

「………」

夕空の橙の光が俯いた彼女の髪や隊服を揺らすさまを見つめ、レイヴンは一つ頷けば彼女を背に中に戻って行くのである。


一つの決意を胸に。













そして、






「ねぇちゃん、これ、戦う前に食べておいて」

「……?まだそんなに体力は減ってないぞ?」

ザウデの中に潜入、明らかにこの先に居ますと言わんばかりに増えて来た赤眼のアサシン達をいなしながら進んだ先、大きな扉の前で、レイヴンは一つのグミを姉のシュヴァーンに向けて放り投げた。
それを危なげなく受け取るも、不思議に問いかける姿に苦笑いし己の頬を軽く突く。

「顔に出そうよ。まぁ、青年達やジュディスちゃんはもう感づいてると思うけど。気が散って怪我してもなんだし、……ね?」

「そう、か……」

そして言われた言葉に一瞬翡翠の瞳を見開くもシュヴァーンは次には口元に笑みを浮かべ小さく「ありがとう」と口にしてそのグミを口に放り込んだ。
その姿を確認し、喉が嚥下の為に上下するのを見届けてからレイヴンは前を向いた。

「行こう、青年」

声を一番前にいたユーリにかければ、2人の様子を見ていたようで一つ頷いてから扉にかけた手に力を込めた。ぎぃと、先代の技術の固まりでもある遺跡の扉は全く力を込めずともスムーズに開き、その先に開けた蒼い世界に一瞬目を細めながらその先に目線を向けるのである。









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