聖なる炎と陛下と仲間達
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ーーーまずい。
ディストは次から次へと飛び掛ってくるグリフォンの攻撃をすんでかわしながら下を見てそう思った。
「世界に一つだけの花4」
「ぐ・・・!」
「ジェイド!?くそっ・・!!」
個々の能力は確実にピオニーたちのほうが上だった。しかし多勢に無勢。いかんせん敵の数が多すぎた。
簡単な譜術は使えるのだが長い詠唱を必要とするとジェイドにも敵の手が伸びてくる。さすがにピオニーも一度に5人の相手はきつく息を荒くしながら悪態をついた。
加えて、なんとかピオニーが敵の手を押さえてもグリフォンがジェイドの詠唱の邪魔をする。
ディストもジェイドの方にグリフォンを行かせまいとするのだが、もともと戦闘に向かないディストだ。数の多いグリフォンを簡単に取り逃がしてしまっていた。
さらに言えばピオニーも軍人ではない。護身用にいろいろ習ってはいるが実践にはあまり馴染みはなく、戦いが長引くほど息を荒くしていった。
そのため、二人の頼もしい助っ人が入ってなお、ピオニーたちの劣勢だった。
「残念だったな・・リラエル。貴様のほうがやはり劣勢のようだぞ?」
「うるせえな、まだ・・やられてはねえだろうが。」
敵将であるゲオルグがトントンと肩に担いだ大剣を叩きながら余裕そうに言えばピオニーは息を切らしながらも相手をにらみつけた。
「そうだな・・しかし茶番はこれでおしまいだ。その助っ人ともどもまた人質として役に立ってもらうぞ!!」
しかしゲオルグはそれを特に気にした様子は無く、逆に更に笑みを浮かべれば周りの手下達に目配せをすれば剣を握り締めてピオニーに襲い掛かって来た。
と、同時に手下達はジェイドに向かって走り出した。
「何?!」
「敵を叩くときは、先ず譜術士を叩くのが定石だ。だろう、リラエル?!」
「ぐっ・・・!!」
驚いてすぐに助けに行こうとするもゲオルグがピオニーに大剣を振り下ろしてきたため、それを短剣で防ぐことで足止めをされてしまった。
「ジェイド!!」
「リラエル!!貴様の相手は俺だ!!」
そしてそのまま防御したピオニーの腹目掛けて蹴りを繰り出した。
「くっ・・」
ジェイドも自分は接近戦には向いていないことは自負している。かつこの人数では裁けない。
それは目に見えてわかる。
しかし、ピオニーがそこにいる以上、ジェイドとて逃げられないのだ。
「しかたありませんねぇ。私はこういうことには向いていないのですが・・」
囲まれてなおジェイドは、余裕そうに言う。
「なら、降参したらいかがですかねぇ。そんなきれいな顔を傷ものにするのは気が引けますからねぇ・・・かの有名な、ネクロマンサー殿?」
中の一人が下品そうに言えばジェイドは肩をすくめた。
「おや、わかっていましたか。」
「あちらのリラエルという方もそれなりの美形ですが貴方もいけてますよ〜?まずはあちらを楽しんだら、貴方も可愛がってあげますよ・・」
「・・・ほう。それはいけませんねぇ。」
しかし、その一言にジェイドは眉間にしわを寄せた。つまり、この下品な男どもは、もし私達が万が一でも捕まることがあれば、陛下を犯すつもりらしい。
「えぇ、全くもって、許せません!!」
それがゆるせるジェイドではない。怒りに瞳をぎらつかせれば槍を握り締めた。