6万打記念小説
□それは罪だから
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「……フレン・シーフォ。お前に頼みがある」
「え……?」
ふわりと笑みを浮かべた男は、フレンにとってはずっと慕っていた人物。そんな人物が滅多に見せない笑みを向けて言うのだ。フレンにはその言葉を断ることは出来なかった。
これが、大きな間違いであった事。それに気が付くのはそんなに遠くは無い未来の事である。
それは罪だから
「あの、レイヴン?どこにいくのです?」
「…………」
ざっざ、と二つの足音が砂漠に響く。目の前には一面の砂漠。近くにはオアシスがあり、どこか見たことのある景色であったが今はそれを気にしている暇はレイヴンには無かった。
もうすぐ、彼が来る。
後ろには何も知らずに自分についてきたお姫様。
「嬢ちゃん……本当に、いいの?」
ざ、と足を止める。
そして問いかければ、後ろのお姫様は何も答えない。
レイヴンには分かっていた。
『世の祈りを受け満月の子らは命燃え果つ』
それは『満月の子』として強い力を受け継いだエステルに死ねと言う事を示していると思っていること。
ユーリ達がそうならないようにと行動してくれてはいるが、大事な場で何も出来ないず、自分が是と思ってしていた回復も、自分の力を持ってしては毒にしかならないという事実。
それがエステルを深く傷つけどうしてよいかわからない状況に持ち込んでいること。
……だからこそ、レイヴンが一番いい方法を知っている、と行ったときにエステルは付いてきたのだ。
しかし、地上に降りる前からレイヴンは思っていた。
このままでいいのか、と。
今までずっとアレクセイに従い、屍のように生きて来た。
しかし、ユーリ達と出会い、今まで見ないようにしてきた穢い事実も目にし、それに立ち向かっていく青年たちを見てレイヴンの気持ちは変わり始めて来ていた。
ドンに任された責任、己を見上げたハリーの思い。
ユーリの決意、仲間たちの思い、フレンの……
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