6万打記念小説

□雪の舞う街の一角にて
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昔から、雪の降る日は決まって機嫌が悪かった。
気分は最悪、調子も出ない、女の子に会っても全く気分は改善しないし、寧ろ思い出したくもない事まで思い出してしまう始末。
そうなれば、あの呪いの文句を思い出して更に気分は沈みこむ。
過去を知る人物に会え心配そうな顔をされるし、知らない奴らにもどこか様子の可笑しい自分に気付かれる(何故かこのバンエルティア号にはこういう気持ちに目ざとい人間が数多くいるのだ)。それはゼロスの気分を不快にしかさせないし、更に気を使って疲れる。




ならば、そうならないように誰にも会わないようにするしかゼロスに道は無かったのである。




















雪の舞う街の一角にて














「……で、俺さま部屋にいたはずなのに、なんでこんな所にいるのかねぇ?ジェイドの旦那?」

「さぁ、私はただ新しい実験の為の人体実験の手ゴマが欲しいとハロルドに頼んだだけのですが」

「ちょ…!それ俺さま初耳なんだけど!?」

目の前にはふわふわと舞う雪。
息を吐けば、冷たい空気にさらされた吐息が息の中の水に反応して白く視界を曇らせる。
そんな雪の舞う街の中に何故か、ゼロスはジェイドと2人歩いていた。












ゼロスは、確かに部屋の中にいた。




同じ部屋のユーリもガイも最近株を一気に上げて繁盛、依頼の数も増えたギルド・アドリビトムの組員として仕事で居ない為、一人カーテンを閉め切り暗い部屋の中で何事も考えずに熱い珈琲を飲んでいたのに。
突然ノックも無く部屋に現れたハロルドに「暇人発見」と笑顔で言われ、手を引かれて訳も分からぬままに外に投げられたのだ。



………………雪の舞う、この街に。






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