6万打記念小説

□言葉の意味
4ページ/5ページ




「ゼロス、おいゼロス!」

「……何」

その後、ゼロスにやっと会えたのは更に3日後。
どうやったらこの狭いバンエルティア号の中、更に同室なのに此処まで会話や顔を合わせる事無くほぼ一週間も過ごせるのか不思議でたまらないがゼロスに顔を合わせて声をかけ会うのは6日振りだ。



と言うよりも何とかゼロスよりも早く依頼をこなして、甲板から戻ってくるだろうゼロスを待ち伏せしたのだ。



夜中寝ているゼロスを叩き起こすと言う手段もあったのだが、それは同じく同室者のガイが許してくれなかったのだ。
そんな事をしたら可哀そうだろ?朝に早くに起きて聞けばいいじゃないかと困った顔で言われれば心配性なこの男の前でゼロスを起こすことは憚れてしまったし、どれだけ早く起きようとしても起きれないユーリは気が付けばいつも10時過ぎに目が覚める。
そして「今日も遅かったですね。残りの依頼はこれですよ」と笑顔で半日かかるのではないかと言う残り物の依頼を引き受ける羽目になっていつも会えずにいたのだが。


今日の魔物退治は一緒のメンバーがよかった。
多量の魔物退治であるが、洞窟内全体で近くにもいる魔物。
しかもメンバーは同じく寝坊したとのイリアとスパーダ。そして研究で最近依頼を受けていなかったジェイド。
イリアはジェイドを嫌っている節があり早くに蹴りを付けたいとスパーダと一気に魔物を殲滅に向かった(因みにイリアは世界樹の洞に連れられた経験が多くバンエルティア号の中ではかなりレベルの高い部類に居る)為に依頼は直ぐに終了したのだ。


そして帰ればゼロスはまだ帰っていないとの事、これを逃せばまたチャンスは遠のくとユーリは甲板でゼロスが帰るのをじっと待っていた。












そして、ゼロスが帰って来たと同時に声をかけたのだ。





「お前、俺に言う事ねーのか?」

「別に、俺さまユーリ君に用事なんてない」

しかし、ゼロスは一切ユーリに視線を合わせようとはせずにそのまま前を通りぬけようとして。
ユーリはゼロスの腕を取ればぐいと強く引っ張った。

「ちょ…何しやがんだよ!」

「うっせぇ!何で俺を避ける!俺が何をしたってんだよ!?突然何も言わずに俺の視界から消える様な真似しやがって!」

嫌がるゼロスを引っ張って甲板の端に連れていけば端にゼロスを押し付けて己の腕で囲んで逃げ場を奪った。ゼロスの言い訳を聞くまで絶対に離さないと言う意味を込めて。
じっと、スカイブルーの瞳を見つめていれば先に折れたゼロスはユーリから視線を反らした。

「……だって、ユーリは俺の傍にいちゃいけねーから」

「なんで」

「俺さまは、誰も救えない。ユーリがそう言ったんだろ?」

「は?」

ゼロスの言葉にユーリは首を傾げた。
そんな事を言った覚えはまるでない。
しかし、ゼロスは何かのタガが外れたかのように此方をユーリがしたように睨みつけて来た。

「俺が誰も救えない神子だって言ったじゃねーか!!俺は……近くにいる奴を不幸にするから…!お前だってそう思ってんだろ!?人を珍獣か何かと思ってやがんだろ!?くそ……信じなければよかったぜ!」

そしてその口から出る言葉にゼロスと一緒に行った食堂での話が思い出される。
確かに、確かに己は言った。
だが、それは。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ