6万打記念小説

□SAV!!2
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――――――その一時間ほど前のお話






「よお!!」



ひょっこり、と見た事のない文化や文明、そして自分たちとは違う方法ー譜術ーと呼ばれるもので魔術を構成する世界に興味を持ったフレンに、どうせ見た所で世界は違うのだから干渉のしようがないだろうし、好きなだけ見ていけと、何とも寛大な言葉を巻き込んでしまった国の皇帝は言った。そして笑顔で軍部や資料室の閲覧許可を出した。
本当にこの男が皇帝なのかと疑いたくなるような寛大…自由奔放な男だが、ピオニーと名乗った男は、フレンとレイヴン、それにユーリにまでに本当に軍部や宮殿を勝手に歩けるようにしてしまったのだ。






だが、その代わりにと3人に与えられたもの。
それは軍服。
ピオニー曰く「マルクトの軍人扱いにしておいた」というそれだが、手早く証明様のカードまで手渡されればその早さに脱帽するしかない。
しかしレイヴンに至っては別な意味で唖然としたが。




何故ならピオニーが渡した軍服、それはフレンやユーリはちゃんとした男ものであったがレイヴンのそれだけ女モノ、つまりはスカートだったからで。
直ぐさまに抗議するも「170センチ台の軍服がなぁ、男ものが今無いんだよ、なんせそんなに背がちっこい軍人があまりいないからなー」なんて言われて暫く衣装を持ったままに愕然としてしまったのだ。

そんなこともありつつ、軍には興味が無いと言うユーリを置いて軍部内を見て回っていた二人だが、ふと呼ばれて振り返った。



その先には。









「ピオニー陛下……」

「どうだ?なんか分かったか?ん?というかレイヴンは髪を下ろすとまた変わった感じだなぁ」

「煩いです」

やはりというか笑顔のピオニー。
もとより青の騎士服だったフレンは似合うのは分かるも、案外にレイヴンにもそれなりに似合う事に己の見立ては正しいとピオニーは思った(勿論170センチ台の軍服が無いなんて言うのは大きな嘘であった)
そして、挨拶をしてくるフレンにピオニーは視線を向ける。

「なぁ、フレン。お前騎士団と言う所の実質トップなんだろう?皇族護衛の経験はあるか?」

「は……っ、えっと、数度ならば」

突然の質問にフレンはぴ、と背を伸ばしながら答えた。返答にピオニーはふむ、と顎に手をやり何かを思案するように視線を横にずらす。

「そうか、ならばちょうどいい。街にちょいと視察に出たいんだが付いて着てくれないか?そこで手に入る情報はお前らのもんだし、街にまだ勝手には出れないんだろう?ちょうどいいと思わないか?」

「は…?」

「お言葉ですが陛下」

そして提案された内容にフレンは首を傾げた、つまりは。と考える前にレイヴンが前に出る。

「俺たちは、陛下に仮に雇われた軍人つまりは『臨時』軍人であり、ですが雇われているわけでもありません。更に言うなら俺たちは貴方がさっき言われた通りここの街には出た事がない、つまりは地理が全くない。もしも何かあれば対処できる、という確実な保証がありません。そんな俺たちに護衛しろ、というのは無理があると思いませんか?」

「シュヴァーン隊長…」

あまりに素早く叩きだされる答え、そしてその立ち振る舞いにフレンはもう一つの彼の名前を口にする。もとから髪を下ろした後ろ姿は『彼』を彷彿させるのだ、フレンがうっとりと名を呼んでも仕方がないのだが。
その呼ばれた名前に軽く眉間に皺を寄せつつレイヴンはフレンには答えずに、じっと前を、ピオニーを見つめる。

「……お前、中々頭が切れるな」

「俺たちの期待の星なので。人生を棒に振らせるような真似をさせたくありませんから」

「シュヴァーン、隊長……!!」

「黙っていろフレン」



もう一度呼ばれた名前にレイヴンは軽く後ろを見て、きらきらとした視線を送るフレンを睨みつけた。
そして前を向けば。








「あぁ!?」

「え?」

脱兎の如く、横の窓から足を乗り出し外に逃げ出す皇帝の姿。
一瞬あった視線にレイヴンが声を上げれば、にやりと笑うピオニー。

「人生を棒に振りたくないのなら早く追っかけてくるといいぞ!!」

そしてそのまま、窓から外へと逃げ出したのである。


「〜〜〜〜!!もう、なんなのあの信じらんない皇帝は!!行くわよ!フレン君!!」

「は、はい!!」


はっはー!!と笑い声が遠ざかる様子にレイヴンは直ぐさまに気を取りなおせばフレンに声をかけてから同じように窓から飛び降り、フレンもまたその後に続いたのである。

その一連の出来事があった直ぐ傍の通り廊下。

















「ズラ?」

書庫から本を取りに来ていた牢獄の科学者の部下……というべき譜業であるタルロウは首をかしげつつそのまま何もなかったかのようにその場所を通りすぎるのである。












そして。
あった事を作り親であるサフィールに報告し、大絶叫を響かせられる事となったのだ。






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