6万打記念小説

□Who Is The BestUnhappy?
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今までもそれなりに事件に巻き込まれる事が多かったが、それにしても。





「今日、ゼロス君運悪いんじゃないのー?」

「それは俺さまの台詞だってーの!俺さま普段、女の子からいいもの貰えるようにって、街じゃラビットシンボルか必ず持たされるもん」

「……ゼロス君」

それは……つまりいつの間にか良いように使われてるのね、なんてレイヴンが内心思いつつ確かにゼロスがポケットから出したのはラビットシンボルで。なら自分が原因か、死んでも尚運が無いのか、などと一般市民や酔い潰れていたりするギルド員を壁の端に寄せさせる一味のメンバーをよそに思っていたりした。
が、その一人が未だに端のカウンター席に座っていたゼロスとレイヴンを発見して近くに寄って来た。





「んだ…お前ら。早くあっちに行け!



そして、苛立った様子でガン、と前のカウンターを蹴り上げればゼロスは視線だけをレイヴンに向ける。
それはどうするか、という目での問いかけ。
レイヴンとしては大きな事になる前に事を済ませたいのであるが、人質は子供を含めて3人。ウエイトレスの一人には首筋に短剣が当てられていて誰か一人でも不審な事をすれば危険かもしれない状況ではある。
それでも、普段の状況ならば立ち向かった……の、だが。

「……へいへい、行こうゼロス君」

「はーいよ」

こんな事になるなど思ってもいなかった事もあり、二人は存分に酔っていた。
奢りの度の一番強い酒も二人で飲みほしたしそれ以外にも数本。
意識はしっかりあるのだが、ふらつく足を自覚する現在、挑むのは厳しいとレイヴンは判断した。その為、レイヴンは一つため息を吐いた後にカウンターの椅子から腰を上げた。
それに伴いその意味を理解したらしくゼロスも素直に腰を上げる。








が。
ふいに、壁に向かう様に促した男がゼロスの髪を強く引いた。突然だったためにゼロスはそのまま後ろにふらりと足を下げる。

「……何よ、痛いんだけど?」

それでも何とか下げた足で床を踏みしめどうにかそれ以上バランスを崩す事を避けたゼロスは軽く髪を押さえながらその男を睨む。
と、男は下卑た笑みを浮かべてゼロスを値踏みするように見る。

「……あんた、男にしては良いじゃねーか?どーです?ボス?こいつ、一番の上物でねーですかー?」

そして一通り見れば、ゼロスの言葉を無視して一味の中で、まだ席から立っていないで酒を飲んでいた親玉らしき人物に男は声をかける。
と、その呼ばれた男は声のかけた、ゼロスの髪を掴む男の方に視線を向けた。


「ちょ……男色趣味なんてあるわけ?!」

その視線に、レイヴンもつい声を出してしまう。
確かにゼロスはそこらへんの女性よりも美人な所はあるが、こんな所でそんな事を云われてしまうのは大いに危険だ。












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