光と闇

□とりっくおあとりーと
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「……ハロウィン?」

「はい……」

その後、作り方を何故か(シュヴァーン本人も不本意ではあるが)知っていた為に彼らの主導権をシュヴァーンは奪い取ると沸騰したお鍋に水を少し加えれば、同時にかぼちゃを温めさせるのと餡を作っておく事を指示した。
その事に慌ただしくも動き出した若者たちは、それでも1時間も立つ頃には温かな香りを放つ白玉かぼちゃぜんざいを作る事に成功していた。
その後にこれはどういう事かシュヴァーンが問いかければ、今回のリーダーだと言うアシェットが照れくさそうに笑った。

「隊長が5年くらい前に、ハロウィンの日に下町の子供たちにお菓子配ったの……覚えてます?」

「俺が?」

「はい」

言われて過去を思い出せば、確かに子供に「トリックオアトリート」と言わさせて菓子を渡したような……と微かな記憶を呼び起こす。

「ちょうどそん時、一緒にお伴でいた新米騎士が、感動して毎年下町の子供たちにハロウィンのお菓子配ろうって事になったんです」

「………」

あの時は、貴族の子供だけが楽しそうにしているのが腹立たしくて己の、シュヴァーンとして殆ど使っていない金を出してお菓子を配っただけなのだが。
それが、気が付けばシュヴァーン隊、若手騎士のイベントになっていたらしい。
その事実にシュヴァーンは唖然とした。




「今回、何か近くの農村でかぼちゃが大量に取れたっていうから菓子じゃなくて他のモノってことでぜんざいにしたんですけど……や、隊長が来てくれて助かりました!」

ありがとうございます!と頭を下げるアシェットに他の新米騎士たちも習って礼をする。それでシュヴァーンはあの仕事熱心なルブランが浮き足立ったこの騎士たちに何も言わなかったのだと理解した。きっと、あのルブランの事だ。この事を知った時は涙を流して喜んだに違いない。それは容易に脳裏に浮かぶ事が出来た。



「……そうか、だが、次はちゃんとレシピは見てからやるようにしてくれ。焦げたものを子供たちに出しては何の意味もあるまい」

「はは……そっすね…」

笑みを浮かべながらも思った事を注意すれば、騎士たちはみんな頭を下げるのにシュヴァーンは目を細めたのだった。
























「閣下」

「うん?なんだいソフィア」

「シュヴァーン隊から、お裾わけだそうです」

「うん?」

その次の日、その絶品おしるこが多量に下町にふるまわれたのは言うまでも無く。その下町然とした素朴で甘いおしるこにお裾わけだったおしるこを貰いにくる騎士が後を絶たなかったらしい。











おしまい!!
もう既に何日も遅れたハロウィン小説!時期遅れだって?わかってるんだようぅうう!
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