光と闇

□短編集
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「……また無くしたのか君は」

「あー……申し訳ございません」


騎士団初めての平民での隊長格。成績優秀、人当たりも良く部下からの信頼も厚い。そんな彼だが大きな欠点があった。
それは。










彼が担当の理由






「……また無くしたんですか?」

「あはは……まぁ、そーゆー事かな?」

イエガーは彼の訪問に、またかと思いながらその扉の先を開けた。
彼が今回無くしたもの、それは。

「どうしてこう、何回も無くせるんですか?鍵ですよ?家に入れないじゃないですか」

「だって、下町とかじゃ普通に鍵なんてしないし…」

「今の貴方は隊長、盗人だっているかもしれないじゃないですか」

鍵。
家の……と、言うよりも兵舎の自室の、だが。
このシュヴァーンと言う男、平民のしかも下町の暮らしであったらしく、家にはいつも誰か人がいる、居なくても鍵はしないのが日常だったらしく。
結果鍵を携帯すると言う習性がないらしい。
どういうわけか、同期で仲が良くなったイエガーはこのシュヴァーンと昔は同室の関係であり、良く鍵を無くして入れずに部屋の前で寝ていたりするシュヴァーンを発見しては中に入れていた。
その為、彼が隊長と言う立場になってもたまにこうして鍵を無くすたびに避難場所として提供してやっていたのだ。

「最初はまさか隊長になってもやらかすとは思いもしなかったんですがね」

「そんな隊長になったからって癖が簡単に直るもんじゃないだろ」

「馬鹿は死なないと直りませんものね」

はぁ、と大きなため息をつきつつ、後ろから抗議をする男を隊長に昇進するまで彼が使っていたベッドに彼を案内した。
そう言えば、騎士団長であるアレクセイがこの忘れ物の天才が自分の剣をも何度も無くしている事(戦場で剣を無くすと言う馬鹿な事があるものかと最初は思っていたのだが、この男の戦闘スタイルと天賦の戦闘スキルは確かで、次から次へと敵の剣を奪い戦意を失わせつつ、抵抗を示すものは切り捨てるような戦い方は確かに剣も無くすとイエガーは思っていた)に胃を痛め、彼にだけ他のものと違う剣を贈る事を決めていたが、はたしてそれにどれほどの効果があるか。


「取りあえず、どこで無くしたか心当たりはあるんですか?」

「ありすぎて分かんないから、アレクセイ様に直に謝ってきた」

にっこり。その笑顔で言われた言葉にイエガーはため息をもう一度吐きだした。
今頃、あの騎士団長は部屋で痛む胃に胃薬を飲んでいるのではないかと思いながら。
















そして次の日、シュヴァーン・オルトレインの隊長とする部隊には落し物、忘れ物を処理する事を申しつけられたのだとか。













おしまい!!私が鍵を何度も無くすので書いてみた。

きっと、この子が一番無くすと良いなって言う妄想?
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