光と闇

□短編集
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「アシェット!」

「んあ?」

呼ばれてアシェットと呼ばれた今年21の青年は振り返った。










拝啓親父、お袋、俺は道を間違えました







「あ、隊長」

「すまない、今忙しいか?」

「いや、今日は非番ですが…」

目の前には、団長がアレクセイから己の同期だったフレンへと変わってから良く詰め所に顔を出すようになってくれた我らが隊長、シュヴァーンの姿。
平民で隊長主席と言う地位に上り詰めたこの隊長は、シュヴァーン隊の中ではもう、崇拝の域にまで達せるとアシェットは思う。
そんな目の前の隊長は、質問に対する答えにどこか困ったように眉間に皺を寄せた。

「そうか……」

「え、なんか問題でも?」

「いや、問題ではないのだが……」

そこで言葉を切った隊長に、ふとその手の中にある書類に気が付く。
もしや、と思うのは。

「もしかして、何か頼み事でもありました?」

「いや、仕事中でないなら押し付ける事は出来ないからな……すまない」

己の捻りだした答えは間違ってはいなかったようで、謝る隊長にアシェットは慌てて手を振った。
休暇なのにも関わらず、自分がこの城の中で支給の兵士服を着ていたからいけないのであって、彼が謝る必要などないのだ。
寧ろ、これが彼の今は亡きキュモール隊長であれば間違いなく「休暇?そんなもん君には必要ないだろ?僕の為に働け愚民が!」とか言って鼻で笑って書類を押し付けるに決まっている。いや、間違いない。
そしてその日は一日最悪な時間を過ごすのだ。


しかし、今アシェットの目の前にいるのは、シュヴァーン隊の、シュヴァーン隊長なのだ。しゅんと、頭を垂れる隊長の姿に優しいなぁ、とか可愛いなぁ、とか更には、ちらりと見える項に別の意味で興奮を覚えそうになりアシェットは顔を反らした。

「や、別にいいですよ、で?どこに持ってけばいいですか?」

「いや、休みなら……」

「いいんですよ、どうせこの後、仕事後に飲みに行かないかって誘いに行くだけの予定で、でも普段着で歩く気になれなくて兵士服着てたんですし。ただ運ぶだけなら問題ないですよ」

それでも、自隊の優しい隊長のお願いは聞いといて損は無いとアシェットは手を出した。
少しの間を置いて、もう一度「すまない」と謝りつつ書類を手渡してきた。

そして



「………フレン騎士団長の元に、これを頼む」










ふわりと、笑みを浮かべて言った。






















「……なぁ、フレーン」

「君も、一応団長なんだから僕に対してもう少しなんかないのかな?いや……僕達以外誰もいないから良いけど…」

「俺さ……いけない領域に足を踏み入れってってる気がしてならねーよ……」

「は?」

「もう駄目だ……」

その後、ぐったりとフレンの執務室で当初の予定を吹っ飛ばしてごろごろと転がるアシェットがいたとかいないとか。




おしまい!
そしてユーリも来て雑談といつの間にかシュヴァーン談義に花が咲く、とな!
アシェ→シュヴァその2でした。
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