□秘めたるもの
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ダン、と修行やら依頼やらで誰もいない部屋の中、ゼロスは壁を強く叩きつけた。




開いた手紙の中、そこに書いてあったのは。



「……!!くそ、誰だこの馬鹿野郎は……!!」

無造作にポケットの中に押し込んだ手紙を開いてみれば、それはゼロスが思うよりも更に深刻な状況を生み出す内容が書かれていた。
ぐしゃりと、手紙を握りつぶす。
壁に叩きつけた手が痛むのも気にせずにゼロスは窓から外を見る。




―――一人で出るのは………まずいか。




天使族はその特殊な羽故に、空を自由に飛ぶことが出来る。しかしソレは他の人間から見れば異端で天使族と言うだけで冷たい目で見られる事もあった。
このアドリビトムは人間以外のガジュマやハーフエルフ、水の民、もふもふ族など様々な人種がいる為に別にこの中にいては隠す必要もないから羽を出して向かってもいいのだが、そうできない訳がある。



リーダーのアンジュだ。

勝手に外に出ようものなら、心配して誰かを送り出し、帰ってきた後は罰の掃除やら何やらを押しつけてくる。罰を受けるのは構わないが、心配して追いかけられるのはまずい。
こっそり出ればバレない自信は無くも無いが、この船には忍者もいるし、普段はどうであれエキスパートにバレれば全体に広がるのも時間の問題である。


―――それならば、依頼を簡単の受けて、バッくれてこっちに向かうか……誰か数人を巻き込むか……

一つ目もやはりあまり大きな時間は取れない。
長い時間をかければ不審に思われるし、そうなれば……。

ゼロスは思考のふちに落ちながら目を細める。



「しゃーねぇ……誰か物分かりの良さげなのを巻き込むか」

そして出来れば口の堅い奴を一人か二人、とゼロスは決断し手紙を無造作に封筒に押し込んだ。

その中には。











『セレス嬢は預かった』


と書かれていて、ゼロスは焦りの中で誰もいない部屋の扉を押しあけるのである。




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