光と闇

□guardian
2ページ/6ページ






「………変わった事?」

「あぁ、実はな、最近俺らのシュヴァーン隊長が可笑しくてさ、なんかしらねぇか?」



その日の夜、いつも忙しいシュヴァーンを捕える事が出来なかったらしいルブラン達小隊長と今日の反省を終えた後に、アシェットはその手にお土産とばかりに温かな肉まんを持参して今はこの騎士団のトップとなったフレンの部屋に忍び込んでいた。
ルブランに聞くよりも、更に接する機会が多いだろう、同期の団長様の方が話が早いと踏んだアシェットの判断である。


最初は、アシェットの登場に困った顔を見せたフレンであったが、お土産の肉まん(フレンの好物が肉類である事を考慮した献上品とも言えるが)を持ち、更に彼が一緒に背中を預けて戦っていた頃から憧れていたと言うシュヴァーンの話になれば、既に仕事を終えていた事もありすんなりとアシェットを迎え入れた。
肉まんに紅茶と言う合うのか合わないのか分からない組みあわせで向い合せに座りながらに現在の状況を簡単に説明すればフレンは顎の下に手を当てて思案する。

「……そんな、気になるような事は……」

「無いか?」

「うーん……確かに最近は隊長の笑顔が少ないとは思ったけど……」

どこを見ているんだ、と言う突っ込みは取りあえずアシェットは避けた。
ず、と紅茶をすすり飲みこむ事で何とか言葉を一緒に飲みこんだ所で、ふとフレンはそう言えば、と顔を上げた。

「封筒を受け取る事が多くなったかな。それを見たら、ため息を出したりとかしてたかもしれない」

「封筒?」

フレンの言葉に鸚鵡返しで答えると、フレンは一つ頷く。そして座っていた椅子から腰を上げると引き出しから名前の書かれていない封筒や何処かで見た事のある印の押してある封筒などを数枚取り出した。

「うん、一応、シュヴァーン隊長がいないときは僕が預かってるんだ。一応、シュヴァーン隊と一部の上層部の人しかシュヴァーン隊長がレイヴンさんで、ギルドとも繋がっているって知らないしね」

ギルドからの連絡も多く来るシュヴァーン宛てへの手紙はプライベートの問題以前に重要機密が多すぎて他の人に見せる事は出来ない。
その対処としてシュヴァーンが留守の際にはフレンの元で預かっているのだ、と。



「どの封筒、とか分かるか?」

「そこまでは……でも最近はこの名無しの封筒がとても増えてるけど……」

そこまでの話でアシェットは、フレンの持つ封筒の中で差出人の無い3つのうちの二つの封筒をじっと見つめた。その視線の意味に気が付かないフレンでも無く、眉間に皺を寄せるとその封筒を元の場所、棚の中にしまい込む。

「駄目だよ、これはシュヴァーン隊長に充てられた手紙だ、僕たちが見るなんて犯罪じゃないか」

そして言い切られる言葉に、しかしアシェットも立ちあがるとフレンの前に立つ。

「んなこと言って、もしそれがシュヴァーン隊長に対する脅迫とかだったらどうすんだ?それで隊長が誰にも言えずに苦しんでいたとしてもお前はそれを許せんの?な、許せんのか?」

そして、相手もシュヴァーン隊長を大事に思っているからこそ、断りずらい言葉を並べて問いかける。ぴく、と反応するように揺れる肩にアシェットは目を細めた。
明らかに動揺している。



「そして折角戻ってきてくれたのに、一人悩む隊長をどうする事も出来ずに俺たちはまた無力を思い知る訳だ。隊長を守って行くって決めたのになー俺たち」

更に畳みかけるように、フレンの顔を下からじっと見上げて弱い部分を押し込んでやれば、しまわれた机の棚に視線を向けた。

「……何も無かったら、戻せばいいんだよ。もし、何かあったら俺たちシュヴァーン隊はフレン、あんたを許さねーぜ?」


いつもお茶らけた雰囲気をけして、半分睨みつけるように口にすれば目を丸くし、喉を鳴らすフレンの姿。もう一度「見せてくれるだろ?」と問いかければフレンはため息を一つ吐き、仕方ないとまだ迷ってはいたが、引き出しをゆっくりと開き、中から宛名不明の手紙を出したのである。








次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ