光と闇
□武器は酒と涙と色気です
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「……これはこれは、随分とスピーディでしたネー」
広い、蒼い間の中央、そこにやはりレイヴンが思った通り蒼い髪の……最期にドンが己に託した相手であり、己が恋をした女性の恋人でもあり……そしてシュヴァーンの親友でもある男、イエガーがいた。
「イエガー……てめぇ……」
「海凶の爪の党首……ですね」
独特な槍であり、銃である武器を脇に構えた男に前にいたユーリとフレンは同時に鞘に手をかけた。
そしてそのポーカーフェイスを崩さない男を睨みつけた、……のだが。
「……ホワッツ?」
イエガーは2人に視線をよそに更に二人の後ろを見て目を丸くした。
そして2人にも分かる程の驚愕を浮かべる姿にユーリもフレンも後ろを見たくて仕方が無くなる。
しかし、それがイエガーの罠、かもしれないと思うと振り向いた先に撃たれる可能性もあり振りむけないでいたが。
「……あつい………」
「ちょ……!あんた何してるのよ!!」
「わぁ!!ちょっと何で脱ぎ始めるのシュヴァーン!!」
「あら、大胆」
「シュヴァ姐が壊れたのじゃ…」
「シュヴァーン!どうしたのですか!!」
更に衣ずれの音と、他のメンバーの慌てた声に何が起きているのか判明すれば既に振り向きたくても振り向けなくなった。
振り向こうとした矢先に目の前の男がにやりと笑って二人に銃の先端を付きつけたからだ。
それは『見れば殺す』と目で語っていたのもあり見たくても見れない状況が出来ていたのだが。
「……レイヴン、さっきシュヴァーンに何を飲ませた?」
仕方なしにユーリはそのまま後ろの騒ぎを聞きながら先程グミのようなものを渡していたレイヴンに向けて声をかけた。
「純度100%のブランデーをグミの元に混ぜてレモングミに見せかけて見たのよねぇ……まさかここまでやるとは……って、ねーちゃんソレは脱いじゃダメぇええええ!!!」
「何を脱いだら行けないと言うんだ?これくらい……」
「いくないくなああぁああ!!!」
「うるさいぞレイヴン」
するとあっさりと吐かれ返る言葉に合わせて、ばさりと二人の合間に彼女の騎士団服の下に何時も着こんでいる黒のアンダーが投げ捨てられた。
つまり、今後ろでは。
「……フレン、俺は今猛烈に後ろを見たい」
「……君が後ろを振り返ったら僕は容赦なく君を法律として裁くよ」
今この場合、後ろを振り向いた所で何の法律も触れないのではないか、そうは思うも親友と目の前のイエガーはもし振り向こうものならば確実に攻撃を加えてくれるだろう。間違いなく。
アレクセイの元に辿りつく前に隊長主席様の裸(だろう)を見て殺されるのは流石に避けたい。
いや、きっと役得でもあるのだろうが。
「……いえがぁー…」
「シュヴァーン……ちょっと酔いすぎでは無いですカ?相変わらずアルコールドリンクにウィークですねぇ」
「おまへらが、びーはーどどりんかーなんだろうが」
「……呂律が回らないのにどうして言えますか」
ふらふらと千鳥足で前に出て来たシュヴァーンは下は履いたままであったが上半身は晒し一枚の姿であった。
朱色の剣を持った手は重さにふらつき上手く真っ直ぐに進んでいない様子で且つ、言葉も明らかに舌が回っていない。
そんな言葉だがイエガーの言葉にきちんと返していてイエガーは眉間に皺を寄せた。
ついでに言葉がイエガー語が無くなっている事に気が付いていないのか、真っ赤な顔で近付くシュヴァーンに合わせて一歩後ろに後ずさった。
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