聖なる炎と陛下と仲間達

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「リラエル大佐!!」






その叫び声にピオニーは持っていた短刀を振り向きざまに前に突き出した。
ガキィと大きな音を立ててピオニーの前でその大検は止まった。

「・・・やはり貴様がこの中で一番強いな?」

「そりゃ、どーも。」


ゲオルグと名乗った男は剣を押し付けながらにやりと笑う。それにつられてピオニーもにやりと笑った。
ピオニーの兵士達はみな既に地に伏せていた。
かろうじて意識のあった兵士が叫んでいなかったらピオニーはきっと大怪我をしていただろう。

「く・・の、やろっ・・」

力任せに大検を押し付けられればピオニーは眉間にしわをよせる。


ーーーこのままでは確実に力負けをする。



そう直感で悟れば、一瞬だけ大検を押しのける力を抜いて隙を突いて懐へと入り込めば肘打ちを決めて距離をとった。

「・・はっ・・。」

ツウ、と流れる汗を軍服のすそでふき取ればピオニーは相手を睨む。
ジャリ、と砂っぽい床をブーツで踏みしめれば逆手にもった短剣を握り締めた。


大勢はピオニーの圧倒的な不利だった。
こちらの兵はみんな体を動かせる状態では無く、戦えるのはピオニー一人。
に対して相手方は手下は多少の手傷はあるものの戦闘不能者はいない。ニヤニヤと笑いながら自分とゲオルグの戦いを見ていた。


ーー今のところ戦いに参加するつもりは無いらしいな。

逃げようとすれば、出来なくは無い。
しかしピオニーには逃げられない理由があった。

仲間の、兵士だ。
彼らは傷ついているが生きているのだ。だが、自分が一人抜け出せばどうなるかはわからない。
それゆえにピオニーは逃げなかったのだ。

とりあえず、目の前の男をどうにかせねば。


ピオニーはそう思い、どこまでも黒い瞳を持つその男を強くにらみ付けた。
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