殿下と仲間達
□思い
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「ちょっと、ピオニーに話したいことがあったんだ。だから、無理して来ちゃった。」
「……アホかお前は。ほら、こっち来て座れよ。」
笑顔で言えば、ピオニーは呆れた顔をしながらも嬉しそうに乱雑に物が置かれた部屋から座布団を出してくれた。
「アリエッタ。ちょっと待っててね。すぐ行くからさ。」
「……うん。終わったら呼んで……下さい。アリエッタ、この子と上に……います。」
「うん。」
アリエッタに窓ごしで言えば彼女はフワリと空に消えた。それを確認してから窓を閉めてピオニーの準備してくれた座布団に座った。
「で?なんのようなんだ?アリエッタにも聞かせられないのか?」
「アリエッタだから、聞かせられないの。察してよ。」
「察してるから座布団一つなんだろ?」
二人だけの室内で、足を前に伸ばしながら言えば、ピオニーはクスクス笑いながら僕専用のマグカップ(因みにアリエッタ専用のも僕が置かせたのがある)にココアを煎れて渡してくれた。
「頂きます。」
「おぅ。」
ダアト最高峰の僕が、こんな毒味もせずに何かを飲んだり食べたり出来るのはきっと此処だけ。
他に誰もいないし、別に構わないし。
「………僕ね、僕を媒体にレプリカを作らされる事になった。」
「死ぬから、か?」
「………うん。」
僕が死ぬ事は預言で決められていて。そのことをピオニーは知っている。僕が教えたからね。
ズズッと、ココアをすする音だけが響く。無音って、あんまり好きじゃないな。
「僕が、僕じゃないのに、僕として『イオン』として扱われる。」
「…………」
「僕の存在が、レプリカに引き継がれて、『僕』がいなくなるんだ。」
マグカップを眺めながら、僕は淡々と言った。マグカップに写った僕の顔ったら、情けないったら。
「………アリエッタには、さ、僕だけのフォンマスター・ガーディアンでいて欲しいから、レプリカが僕を継いだらアリエッタには下りてもらおうと思う。」
「……独占欲の強いやつ。」
「いいじゃない。それくらいさ。」
フフ、と笑いが溢れた。