殿下と仲間達
□思い
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しかし、レプリカのイオンは何か言ってボロが出たら困るから何も言えないだろうし。
教団も何も言わないだろう。
…………だから、アリエッタも俺の所に来たのだろう。
「アリエッタ。」
「何……ですか?」
「イオンはな。俺にこう言った。『僕のフォンマスター・ガーディアンはアリエッタだけだ』って。お前にも言ってただろう?」
「………うん。」
「イオンの言葉、信じられないのか?」
「……そんな事はない……です。……でも。」
「じゃあ、いいじゃねぇか。誰がどう言おうとお前はイオンがただ一人認めた、フォンマスター・ガーディアンだ。理由はともあれ其だけは…………真実だ。」
ポンと頭に手を置いて優しく言えば、アリエッタは見上げて来た。
「………真、実。」
「そうだ。お前がイオンの認めた人間であることに変わりはない。そうだろ?」
「………うん。……うん。」
「アイツの性格はお前だって知っているだろ?上辺だけ綺麗な顔をして置いて腹ん中がドス黒くて……」
「い、イオン様の悪口言ったら駄目です!!」
「はは、ワリィワリィ。だけど、そう言う事だ。」
イオンの悪口に噛みついたきたアリエッタを撫でてやりながら俺は笑ってやった。
「……アリエッタ、ちょっとだけだけど、元気出た……」
「そりゃ、良かった。」
「………あ!」
「?」
やっと笑みを浮かべたアリエッタに俺も笑みを浮かべれば、アリエッタが何か思い出したように大きめのサイドバックから五冊の厚めの本を取り出して俺に差し出して来た。
「イオン様が、貴方にって。」
「俺に?」
それを受けとればその厚みになんだろうと、首を傾げた。
……特に、何かを貰う心当たりが無かったからな。
それと同時にアリエッタが飲み終えたカップを乱雑なテーブルに置いて立ち上がった。
「アリエッタ……もう帰ります。」
「あ?お前、解雇されたんじゃ……?」
「雇ってくれる所………あった。」
「そっか。」
どうせなら自分の所で働かないかと言いたかったが、そうも行かないかと思い直して本を置いて俺も立ち上がる。
……まぁ、些細な見送りだ。
「アリエッタ、頑張るね。」
「頑張れよ。たまには遊びに来ていいからな。」
「………うん。」
そう、笑みを浮かべてアリエッタは空に消えていった。
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