殿下と仲間達
□宝物は
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「……」
ジェイドはその大きな屋敷を見上げながら眉間に皺を寄せた。
昨日、この家に忍び込んだことをきっかけにここの皇子に弱みを作らせてしまった。
お前の保障と引き換えに外に出せ。
彼はそういった。
どうしてそんな事を自分が手伝わなくてはいけないのか、とジェイドは内心思う。
自分ならうまくごまかすことも出来なくはなかったのか。
しかし、彼に会って。
そんなことは最初に浮かんでは来なかった。
先ず眼に入るのはケテルブルクではめったに見ることのないその澄んだ海のようなブルースカイの瞳と、太陽みたいな金の髪。
そして、自分には殆どの人が向けない…心からの笑顔。
その表情を見たとき、どうしてか彼を否定することが出来なかった。
そして今日もまた彼のところに来てみた訳だが。
「…………何、これ」
彼の部屋の前には投げ出されたわけの分からない物。
あちらこちらに雪に刺さる様に落ちている。
暫く呆然と立ったままで眺めているとまた、熊のぬいぐるみが今度は狙ったかのようにジェイドの頭の上に振ってきた。
ポフ、なんて言いながらくりくりした黒目の茶色ばんだぬいぐるみ。
ネフリーが見たら喜びそうではあるがそんなものがジェイドに振ってきても面白くもなんとも無いのが現状である。よってそれをポイと本来捨てられるはずであった雪の上に捨てた。
「あった!!」
そのぬいぐるみが雪の上に到着するのとほぼ同時にピオニーの声が窓の奥から聞こえたのである。
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