響き合う物語
□俺のもの
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「………はぁ」
ついついゼロスはため息をついていた。
あれから、なんとかその理由を知りたくて、嫌われるのが嫌だと思う心が強くて。
ゼロスはロイドに接触を試みた。
しかし、すぐに話は反らされ他のところにいってしまう。
街につけば部屋割りは勝手に決められリーガルとの相部屋。
その後も買い物で逃げられてしまう。
結局何も声をかけることは出来なかったのだ。
最初のうちは何なんだアイツは!と怒りはしたものの、段々また悲しさがあふれ、今日の宿であるそのロビーで頭をテーブルにつけてブルーな気分を全身であふれ出させていた。
「なんで俺さまがあんなやつの為に……」
振り回されているのだろう、とゼロスは思う。
今まで、誰かに振り回されたことなんてなかったから。
……いや、彼自身の母親であったミレーヌを除いて、であるが。
今の気持ちは、どちらかといえばその時の気分に似ている。
嫌われたくなくて、自分の傍にいて欲しくて。
「……なんで、ロイド君なのかなぁ…」
ゼロスは自身の髪の毛を指に巻きつけくるくると弄りながらポツリと呟く。
考えてみれば、自分はいつも彼の言葉で動かされていた気がするな、と思いながら。
ロイドが信じてくれたから、こちら側につくことを決めた、のだし。
「……俺さま、ロイド君にどんだけ依存してんだよ…」
自分の事を振り返り、ゼロスは大きなため息を吐くしかなかった。
と、そこにふと隣に誰かが腰を下ろした。
「神子、今日はいつものようにナンパには行かないのか?」
「……おっさん、嫌味?」
顔を上げる前に声を掛けられれば誰かなんてすぐにわかるといわんばかりにゼロスは言葉を返す。
ソファーが少しだけ相手のほうに傾いてゼロスは顔を上げた。
そこには多少の笑みを浮かべたリーガルの姿。
リーガルが何を思ってここに来ているのか、ゼロスには理解出来ていて、だからこそ機嫌悪く言葉をかえしたのであるが。
「ロイドと喧嘩をしたのか?」
やはり、とゼロスは思う。ここのところの二人のあからさまな距離に疑問をもったのであろう。
しかし、どう考えてもゼロスには思い当たる節が無いのだ。
「……しらねーよ。俺さまのほうがしりたいっちゅーの!」
また今日の仕打ちを思い出して、ゼロスは顔をしかめる。
ゼロスとしてはいつもどうりのことしかした覚えは無いのだ。
「ほう、では神子が知らないうちに何かをして、それでロイドが勝手に怒り、それで神子は落ちこんでいるということだな?」
「ぐ……!」
正論過ぎて、まさにゼロスはぐうの音しか出なかった。
落ち込んでいることまでこの男には丸わかりであったのかとゼロスは相手を見る。
と、ポンと頭の上に手が置かれてくしゃくしゃとかき乱された。
「神子、ロイドはお前が思っているように嫌っているわけではない。しかし……」
「しかし?」
「ロイドを侮るなということだ」
「は……?」
わけがわからないという視線を向けると、ふとリーガルの視線が違うほうに向いたのを見てゼロスも視線をそのほうに向けた。
「ロイド?」
「………」
その先には買い物から帰ってきたのであろう、ロイドの姿。此方をじっと見てきていたので、ゼロスが声をかけたのであるが、その返事は無く睨みつけるように二人を見てから先に歩き出した。
それを見届けてから、ゼロスはまたテーブルに突っ伏した。
「……俺さま、やっぱり嫌われてんじゃん」
リーガルの嘘つき、
そう呟く赤い頭を見下ろしてリーガルは苦笑いを浮かべた。
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