殿下と仲間達
□虹の架け橋
2ページ/4ページ
「ど、何処まで行く気ですか!!貴方は!!」
「いいから来いって、見つかっちまう!」
「見つかって困るのは貴方だけで、今連れ出されて私は非常に困ってます!!寧ろ迷惑で……!」
「しっ!!」
「ムグゥ!!」
なんて勝手な殿下だ、とサフィールは思う。
いきなり走っていたかと思えば手を思いっきり引っ張り柱の陰に隠れさせられる。口も丁寧に塞がれて密着されれば、ふわりと香水の匂いがしてサフィールは顔を仄かに赤らめた。
「……よし、行ったか。で?なんか言ったか?」
この殿下を探しているマルクトの兵士だろう。キョロキョロと世話しなく辺りを見渡しながら去って行けば、ピオニーはホッとした顔をしながらサフィールを見た。さっきのサフィールの言葉は全く聞いていなかったらしく笑顔で首を傾げられた。
「……もういいですよ。」
「?いいのか。」
「いいんです!!行きたい所があるんでしょう!?早く行きますよっ。そして私を早く解放しなさい!!」
「……ははっ!!」
恥ずかし紛れに、それでも少し小さめの声で怒鳴りちらしてやれば彼は一度キョトンとした笑みを作った後で笑いだした。
そして、またサフィールの手を握ると走りだした。今度はサフィールも一緒に。
着いたぞ、ここだ、と言われてピオニーが止まったのは、なんのへんてつも無い王宮の前の庭園だった。
「………で?」
つい、彼を睨んだサフィールに何の罪も無いだろう。此処まで研究社から走って約10分。
たかが10分、されど10分。最近走るなど全く無かったサフィールは息を切らしていた。
「俺はきっと後数年で王になる。」
「………そうですね。」
「俺は戦争なんて望まない。」
「……でしょうね。」
彼がいきなり真面目に言い出して、サフィールは少しの迷いの後、それにまっすぐに答えた。
「だから、俺は俺が王になるときにあの宮殿の前に戦争を必ず無くす証として、平和の証として、虹を架けたいと思った。」