6万打記念小説

□それは罪だから
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「私は……」

「本当は、ユーリ達と居たい。だけど、今のままじゃあ自分は世界を更に危険にしてしまう。自分の居場所が無い、だから俺さまに付いてきた……そうでしょ?」

「……」



問いかけにエステルは答えない。
それは肯定となんの変わりもないのだ。



「なら、信じてあげてよ。この先……、姫様を確かに有効に使ってくれる方がいる。だけど、それは姫様が考えているようなものはありません」

「……レイヴン?」

レイヴンの言葉遣いに違和感を感じたのかエステルが首をかしげた。
しかし、レイヴンは気配で気が付きつつ、前を向いたままに口をまた開く。

「俺は……アレクセイ様を止めます。これ以上、あの方に罪を重ねて欲しくは無い」

それは決意。口にすればレイヴンは手を持ち上げて仲間といる時、一度も取った事の無かった紐を引っ張った。
途端にふわりと髪が重力に従って落ちる。
軽く髪を紐を持ったままの手で撫でつければ、その後ろ姿に『誰か』を思い出したがエステルが息をのんだ。

「…………まさか」

「その、まさか、です」

信じられない、というような声音にレイヴンは苦笑いを浮かべた。
そして振り返り、目を見開くエステルと視線を合わせた。

「シュ……ヴァーン……だったんです?」

「はい」

「……なぜ」

「アレクセイの命令で、10年前から。……詳しい事は今は話せません。もうすぐ、此処にアレクセ様が来ます。あの方は……あなたの力で誰もが平等な、一つの世界にしようと思っている。その思想を持つあの方に多くの人が付いてきた、思想の実現のため……ですが、それは多くの犠牲を伴います」


一気に口にした言葉にエステルはまだ信じられないという顔をしている。
しかし本当の事であり、このままエステルが付いてくれば意思の尊重も無く、捕まって道具のように使われてしまうであろう。


それをレイヴンは絶対に避けたかった。



「ですから、エステリーゼ様にはご自分の意思で俺から逃げて欲しいのです」

「シュ……レイヴンはどうするのですか?」

「俺は、アレクセイ様を止めます」

きっぱりと言い切り、レイヴンはまた前を向く。もう少し先であの方は親衛隊の兵士を従えて待っているだろう。
そこに彼女が付いてくれば、レイヴンにはもうエステルを守りきれる自信は無かった。
しかしまだ、彼らにあっていない今のうちならば……間に合う。

「ですが……」

「もうすぐ、ここにフレン・シーフォ隊長が来る。……アレクセイ様のやっていた事全てを暴いて。それに、ユーリ達も時期に俺たちが居ない事を知って追ってくるだろう。エステリーゼ様はそこに合流して出来れば姿を隠していて欲しい。」

そう口にしてレイヴンは歩き出す。
いや、心はもうレイヴンでくシュヴァーンであったが。

「でも……!」

「行け。行きたい場所へ」





もう、振り向かない。




そう決めてシュヴァーンとして一人砂漠を歩いていくのである。









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