パズル

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「……こんな所に何の用事ですカ?シュヴァーン」



「ちょっと、お前に話があってな、居て良かった」




レイヴンのもくろみ通り、男は部屋にいた。
其処までの道のりで邪魔をしたイエガーの部下はそこらへんで伸びているがそれは己に刃を向けてきたから自己防衛と勝手に思い込むこととして。
こんこん、と何事も無いように扉をノックすれば「どうぞ」との返事でありがたく入室すれば驚きに目を見開いた相手が己を見て来た。
そして冒頭の言葉となったわけである。






「お前、部下を信用するのはいいけど、俺クラスの相手になると無駄な事も頭に入れた方がいいぞ」

「…………お前クラスの男がそうゴロゴロいて溜まるか」

かちゃりとドアを後ろ手で閉めて忠告を口にすれば、最近聞く良く分からないイエガー語では無く昔馴染みな返事が返ってきた。その言い方も無いのではないかと思いながらきっちり鍵も閉める。


「……で?何の用ですカ?今はビジーなのでリターンバックして欲しいのですが?」

「どうせもうすぐザウデで会うから?」

カチャリと言う音と同時にまた、変なルー語で話す相手に話の鼻を折られては困ると直ぐに話の本題に触れる。
元より、昔からイエガーに口で勝てた事はそうそうないのだ。
このまま話を反らされて追い出されるよりさっさと本題を話して帰った方がいい。

ザウデの言葉に反応し、持っていた書類に目を通している最中だったらしい紙に降りた視線はゆっくりとまた上に持ち上がった。


「……俺らをあそこで止められると本気で思ってるのか?」

「…………何が言いたい?」

二つの視線が混じり合う。
昔は瞳を見て話すのが当たり前だったのに、いつからこの男とこうして視線を合わせなくなったのか。久方ぶりの双瞳を眺めてレイヴンは思った。

「お前の実力は知っている。前の実力が全力で無かったとしても、俺たちは今いるメンバー全員でお前が憚るならそれを乗り越える。……勝ち目は無い」

「…………」



「何を、握られた?」




問いかけにイエガーからの言葉は無い。
沈黙が2人の間を抜けた。
それは肯定ではあるが、教える気は無いという意思表示でもあって。
レイヴンはイエガーの座る椅子と机を挟んだ反対側の傍に立てば持っていた書類を手から奪い取った。

「お前は、あんなに慕ってくれる子たちを残して死ねるのか?自分の尻は自分で拭けないのか?」

視線を下に向けたままのイエガーにレイヴンは、いや、シュヴァーンとしてイエガーの友として言葉を連ねた。






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