パズル

□16
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「明日までに全部読みます」

そう言ったのはエステルで。
どんな内容なのか、元より読書の好きなエステルの申し出に、全員一致で頷いた。
結構古いその本は、それなりに分厚くで挿絵も殆ど見られない。
読書など殆どした事のないユーリが読んだ所で時間がかかる事は目に見えていてその申し出に頷く事しかなかったのだ。

そして、傷ついたゼロスをベッドに寝かして一行も休むことにしたのだが。
朝になってゼロスのいる部屋に行ってみれば。




「………ゼロス!?」


既に、ベッドの主はいず、冷たくなったベッドだけが残されていたのだった。














ACT.16













「ゼロスがいない!?あんな身体で!?」

その場で茫然としてしまったユーリだったが、直ぐに正気を取り戻すとエステルの話を聞く為に集まっているだろう部屋に走り込んだ。
その報告に全員が驚きに目を見開き、直ぐ探さなきゃと言うカロルの言葉に頷きそうになったのだが、

「待って下さい」


目の下を涙で濡らして真っ赤にしたままのエステルが引きとめた。

「なんだよエステル。今は…」

「大事なことなんです。ゼロスがどんな気持ちでここを出たのか……私には何となくわかります」

急ごうとするユーリをエステルが首を横に振った。
そして、ゼロスが突然暴走した原因と思わしき、本を目の前に置いた。


「本当にゼロスが、この本に登場したゼロスなら……あまりにも……」









ゼロスが可哀そうです。





と、エステルはまた泣き出しそうな、いや、既に涙を落しながらに震える声で口にした。
その声に冷静を取り戻せたとも言えるが。


「……話してくれる?ゼロス君の……話。嬢ちゃんが掻い摘んでくれていいから」

「ちょっと……長くなってしまいそうなんですけど……いいでしょうか?」

「それが、知る必要のある事で、ゼロスが前話した内容と被らないところなら構わないわ。そうでしょ?」

最初にレイヴンが、壁に寄りかかり聞く体制を作る。
それを見てリタもエステルの座るベッドの隣に、ジュディスとパティが椅子に腰を下ろした。

「……うん、聞く」

「聞かせてくれ。エステル」

カロルもその場に座り、ユーリも迷った後にその場で座った。
探した所で空も飛べるゼロスを探すのは骨が折れる。
それならば、話を聞いてからでも遅くは無い。

全員が聞く体制を整えた所で、エステルは目元に光る涙を拭い、書かれていた本の内容を口にし始めたのである。




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