パズル

□16
2ページ/5ページ




その頃、ゼロスはと言えば。


夕暮れの街を一人歩いていた。
一日寝た(気絶していた)とは言え、感情で神子の宝珠が暴発し一気に魔力を失ってしまった反動は強かったか。ゼロスの力はさほど回復してはいず、長い距離を飛ぶことは出来なかった。それでも、気力で何とか海を渡り何とかダングレストへと足を踏み入れた時には魔力は殆ど無く、体力も限界に近く身体はふらついていた。


「あーあ……これなら少しくらいお金、ちょろまかしておくんだったかなー…」

今手元に硬貨はない。それは宿に泊まることも出来ないという現状を表していた。
しかし既に魔物と戦い硬貨を稼ぐ気力も無ければ、身一つで飛び出た為に外で過ごす手立ても無い。
八方塞がりとはまさにこの事だとゼロスは思う。

前にユーリらと一緒にこの街を散策はしたが、だからと言って一宿一飯を貸してくれる、かつゼロスが信用を置いて願い出れる人づてがあるわけでもないのだ。
ただ、見つかりずらいだろう、人の多い場所、と言う意味でこの街に辿りついたのだ。取りあえず、少しでも身体を休めたいと言う気持ちが強く、辺りを見渡せばそのまま誰も座っていないベンチに腰を下ろした。

「はぁ……」

それだけでも、身体に掛る負担は減る。

「疲れた……」

ぽつりと呟いた言葉は、誰の耳にも入らず、そのまま聞き逃される………












はずだったのだが。


ここはダングレストで。光があれば闇がある。
それはどこにいても。

正規ギルドがあれば………


「おい、見ろよ、あれ」


瞼を閉じ、疲れに意識を失いかけたゼロスの姿に忍び寄る陰にゼロスは気がつかないのである。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ