パズル

□誇れるもの
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「………」

「何よ?皆してその視線はよー」

「いや……なんつーか……よ?」

その後、誰がその神父の代わりをやるのだと焦るカロルに「俺さまが」と口にした後、着替える事を口にしその教会の中に勝手に入ったゼロスは、ぽいとポケットに入れっぱなしにしてあったウインドパックを解放し、何故か入ってあったものの放置していた物の一つ、己の正装服の一つをとりだした。
清楚な白を基調とした葬儀用の衣装。タキシードのようでいて、装飾が所どころにちりばめられたそれは腕を通すのは久しいがゼロスの身体に直ぐに馴染んだ。
バンダナを外し、髪を軽く梳いて綺麗にみつあみに網あげれば完成とばかりに教会の前で待つメンバーの前に出た。
驚きに目を丸く姿は容易に想像は出来たが、声も出ない様子には流石のゼロスも軽く膨れるしかない。

「俺さまの職業は『神子』なんだっての。冠婚葬祭の事なんてお手の物よー?」

「そ……そうなのかい?」

「そうなの!」

首を傾げるフレンに膨れたままに応えては、ゼロスは一度目を閉じる。
思い出すのは、過去に何度も行ったその儀式。神の子にふさわしいその、立ち振る舞いと心情。ゼロスは、全ての感情を無にしてゆっくりとそのブルースカイの瞳を押しあけた。
その視界に映るのは、先ほどとはまた違う、驚愕の顔。


「……この清浄なる教会にて、全ての民に幸福を……そして、共に祈りを。祈りは力となり、意思となり、光となる。このテルカ・リュミネ―スの全てのマナと創世の神に幸いを」

ふわりと腕を上げて、空に手を。
そして一歩前に踏み出し、一部を(まさか女神マーテルと教会に祝福をなんて言えないし。と言う理由から)変更し、慣れた口調で、誰もが聞き入るその音色で言葉を発する。
途端に静まりかえる周囲など、いつもの事だ。

そのまま手を一つに組めば、祈りのポーズを。











「……祈りを」




目を閉じ、もう一度口にすれば周囲が更に静まりかえるのをゼロスは気配で感じるのである。

……それが、いつもの事だと感じたゼロスの想いが大きく回りにとっては違うものだとは知る由も無く。





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