パズル

□ACT.1
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「俺さまの……神子の、宝珠……壊してくれな……?」


これで、いい。
これで。
全身から力が抜ける。
痛みはもう、なかった。




いや、神子の宝珠を胸に取り付けた時点でわかっていた。
俺はもう、人間には戻れないと。
何も感じない、人形。無機生命体へと身体が変わっていた事に。自分の父親の末路、そしてコレットの天使化を見て、こんな風には誰がなるかと思った。だが、救いの塔に付くころにはそんな気持ちはとうに無くなり、もうどうでもよかったのだ。


痛い事は元から好きではない。だから天使として覚醒した身体は痛覚を完全に遮断されたのか、どんなに傷つけられても脳に痛みを送らなかったのはゼロスにとっては良かったとも言える。

それゆえに身体が動かなかくなって、初めて身体の限界を知った。
身体から血がどんどんと抜けていくのが自分自身でもわかる。
それでも痛みが無い為に無理矢理動かせば、切られた部分から更に血が落ちる。
その現状に嬉しそうに笑みを浮かべつつゼロスは彼らに剣を向け続けた。


最初まるで闘う意思の無かったロイド達を挑発し、コレットの状況を口にすれば剣を何とか構えるが、それでも闘志よりも戸惑いや疑惑や悲しみで剣筋は乱れて全くゼロスに彼らの攻撃は当たらない。

早く、早く俺を殺せと。
この『呪われた嘘つきな再生の神子』を倒し、世界を救うだろう『世界再生では無く統一した最後の神子』としてコレットを助けてくれと。


内心で
もう嫌なんだと叫んでいる心を解放してくれと。
彼らの痛いだろう心を抉って無理矢理闘わせた。


そして、その剣が、魔術が、ゼロスの身体を切り裂いたのだ。


あぁ、やっと死ねるんだなと思うと怖さよりも嬉しさの方が大きくてうっすらと唇に笑みを浮かべた。



………これで、セレスは神子になれる。
そして、あの孤島からやっと解放される。



でも、神子になっても犠牲にはならない。
きっと、ロイドなら……ミトスを倒して神子の制度がない世界を作ってくれるから。

ロイド達ならやってくれる。
俺さまがいなくても。


……いや、俺さまがいない方が世界は幸せだから。

だって、俺さまは誰からも……



とうとう動かなくなり、ゆらりと傾いていく身体に満足しながら床に身体を打ちつければ、今まで闘っていたのにも関わらずに彼らは武器を放りだして近づいてきた。





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