パズル

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「俺さま、不眠症だからほとんど眠れないの、だからベッドは4人でテケトーに寝てちょーよ?」





にこり、とゼロスは二つしかないベッドでどのようにして寝るか迷っている男たちを見て笑って言った。
魔物退治やら依頼やらを受けつつ、辿りついた今日の宿で取れた部屋は2つ。
しかも本来2人で使うべきベッドがそれぞれの部屋に二つしかない部屋だ。
女性組は4人しかいない為、ベッドを2人で一つ使う事で落ち付いたのであるが、問題はフレンも合流し5人となった男性陣で二つのベッドをどう分けるかだった。


どうしようか迷う4人をしり目にゼロスはどうせベッドにつこうがこの身体では眠れやしないのだと、そうだ二つのベッドを繋げようよと発案するカロルの声に被せてベッドの使用権を4人に譲ったのだ。

「え……だけど……」


「不眠症なら逆にベッドに横にならないと余計に眠れないんじゃ……」

ゼロスの言葉に顔を見合わせてからカロルはゼロスを見上げる。
そしてフレンも続いて心配そうに声をかけた。
見ればユーリも何も言わないも同じような事を云いたそうな顔をしていた。

「いいの、俺さま万が一にも寝たくても30分も眠れた試しねーし?だからもし眠たくなったらソファででも寝るからさ」

へら、と笑って手をひらひらと振る。……実際は30分も瞳を閉じて意識を夢の中へ落して寝た試しはないが。





前にコレットちゃんは神子になる為の旅の中。皆が疲れて寝ている中、誰にも言えずに孤独の中で一人で夜の長い時間を起きていて。
しかも神子の旅は死への旅。これから死に行く為の過程で、だなんてどんなに苦しかっただろうか。どんなに寂しかっただろうか。それに比べれば……いや、これから死ぬことも年をとることもかなわない身体になっているかもしれないのだし、そう考えれば苦しみは似たりよったりかとぼんやりと考える。






「30分も!?今までそれで平気でいられたわねぇ……」

ゼロスの口から出た新たな真実に呆れたような驚いたような声をレイヴンが出せば、ゼロスはすぐに現実へと神経を元に戻す。あ、しまった、今まで寝てなかった事ばれちまった。そんな事を序にふと思いながら、まぁいいかと思い直して頭を掻いた。

「ま、おっさんと違って若いし?」

「ひどい!!」

「でひゃひゃ!だから、大丈夫よ」

そしてレイヴンの言葉に笑みを浮かべてさっぱりと斬り捨ててやれば背の小さいおっさんは大きなだぼ付く紫の羽織で泣き真似を始めて。
これであのリーガルより年下かよとか思いながらいつも皆からはしたないとか言われてた笑いを洩らす。



「…ま、そーゆー事だからちょっくら俺さま出かけてくるぜー」

そして一通り笑った後に部屋から出るため足を外に向けた。ついでに手をひらひらと振ってやればどこに、と聞かれる前に視線だけを彼らに向ける。

「俺さまそこらの酒場で飲んでくるわ、明日には響かないくらいにすっから安心してねてちょーよ」

軽いウインク付きで言えば、もう寝た振りをする必要も無いのだしと、後に続く言葉を無視してゼロスは部屋を出たのである。
























『ACT.5』










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