サガ小説

□出会いがしらは唐突に
1ページ/2ページ







ーーーあぁ、今日もまた何の楽しみもない一日が始まる・・・・・・








朝の、自分が泊まった宿の前から、カコン、カコン。と薪を割る音が聞こえてグスタフは目を覚ました。ゆっくりと身体を起こせば、昨日まで疲れ果てていた身体はもう力を取り戻していてとりあえず腕を何回か回した後にベットから降りたのである。






『出会いがしらは唐突に』









いつものように髪を整え、

いつものように剣を磨き、

いつものように床に座って闘う為の精神を集中させる。





宮殿を抜け出し、前々からためていたお金を片手に、地位も名誉も何もかもを捨てて、私個人として二本の剣とその腕だけで生きていこうと決めたのは二年前。

あれから、いろんな大陸を渡り歩いた。今まで宮殿の中にしかいなかった私には初めて見る物ばかりで、新鮮な気持ちをもたらしてくれた。



しかし、世間は厳しかった。

何も知らない私は、簡単に人に騙される事も多く、その度に人を信じる事を恐れ自分から他人とは離れていった。それは過酷であるものだと知っていて。

そのため、自分以外は信用できなくなり、ヴィジランツとして働くようになった今の私は単発でその時会ったものと一度きりの契約でしか働かなくなった。
それは、味気なく且つ、私を癒してくれるものではなかったが。


でも、宮殿にいた頃よりはいいと感じていた。

そっと、炎のクヴェルである炎の剣を手に置き座禅を組んだままに目を閉じた。
そして、暗くなった己の視界の中、集中すれば己のアニマを感じて剣が赤く光りだす。更に集中すれば、剣のアニマと同調し、剣を自在に扱えるようになる。
炎の剣はフェニー家の家宝であるファイヤーブランドの、
言わばレプリカ。


しかしレプリカと言えどもその力は本物さながらで、意思の弱いものや異常に強欲なもの、アニマの資質を持たないものには容赦なくその炎が牙を剥いた。

だから、己もこの剣に負けない人間であろうといつも精神を統一させることが日課となっていた。




ふわり、とグスタフの周りを赤い光が包んで消えていく。




―――これで集中は仕舞だ。




グスタフはゆっくりとまぶたを上げれば剣を腰に下げて立ち上がった。



―――飯にしよう。




そう思った。
そろそろ持ち金が底をつく。その前に誰でもいいからディガ−を見つけなくては、と思っていた。そのためにも腹ごしらえは必要なのもだと外に飛び出してから直ぐに学ばされることになる、苦い思い出があったから。
ディガーを見つけた矢先、直ぐに発掘に行くことは過去に何回も経験していた。だからこそ必ず腹を満たしてから人探しをするようにしていたのだった。



鏡の前で服を調えれば、もうこの部屋には用は無かった。扉を開ければそのまままっすぐに階下に向かって歩き出した。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ