輝く物語
□fall in love with at first
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「ひぎゃああああぁぁ!!」
「お?」
その大きな悲鳴に思い浮かぶのはただ一人。真後ろで聞こえた声にゼロスが振り向くより早くにドンと強い力でぶつかられゼロスは前のよろめきたたらを踏んだ。
「済まな…ひぎゃ!!」
「ひぎゃって……ガイ君ー。俺さまどう見ても男の子なんだけどー」
「あ…ゼロスだったのか、すまない、髪の色でつい……」
ついでに振り向き様に女の子に当たった時の反応を返され、ゼロスは眉間に皺を寄せてぶつかってきた男、女恐怖症と言う信じられない症状を持った男。ガイを見上げた。ついでに文句を放ってやる。
と、ガイもぶつかった相手がゼロスであった事に気が付いたのか直ぐに離れて謝ってきた。それにまぁ、良いけどーなんて答えた後、その事件は起きた。
「まぁ、ガイったらゼロスが女性に見えてしまうのですね……なら、ゼロスに女装して貰って少し耐性を付けたらどうでしょう?」
「は?」
「へ?」
ガイに最初にぶつかった本人、ライマ国の王女であるナタリアの一言。
これが全ての発端だった。
『fall in love with at first』
「と、言う事で取りあえず受けてくれるかな、ゼロス」
「……俺さまそんな依頼は受けたくないんだけど……」
その後、良い案ですわ!!なんて一人で盛りあがったナタリアは2人に何も説明も無しにその場を去って行った。嫌な予感をびしばし感じるも取りあえず一度固まってしまったのがいけなかったのだ。
ナタリアは直ぐにアンジュの元に『ガイの女性恐怖症改善依頼』と名打ったそれを、ゼロスへの直々な指名付きで出していたのだ。
それは、ゼロスがアンジュの元へ依頼を受けに行った次の日に発覚した。
「何か俺さま向きの仕事はないかな〜?」
なんて笑顔でアンジュに問いかければ
「ゼロスにしか出来ない依頼が届いているよ」
と同じく笑顔で返してきた、と。
自分宛、と言う事で何やらあまり良い予感はしなかったが、笑顔で渡されれば受け取らない手はゼロスには無い。
取りあえず受け取った依頼書にびしりと固まってしまったのは仕方がないと言える。
しかも、その内容が。
「……『女装して一日ガイとデートしろ』……って」
「あ、ただのデートじゃ時間がもったいないからついでに買い物も済ませてくれないかな」
「いやいやいや、アンジュちゃん?」
れっきとした男である自分があの、極度の触れるだけで飛び上がるほどのガイの女性恐怖症を治せるわけがないと言うか、それ以前の大きな問題で、自分はまず、どっからどう見ても男なのだ。どうしてそうなるのか。ゼロスは慌ててアンジュをしたためる。
が。
「いいじゃない。どうせガイ君のあの女性恐怖症は直らないけど、そうしないとナタリアの気も収まらないわ、適当に買い物をしてくれればいいからさ」
はい、と押し付けられたメモ紙に尋常ならない量の買い物のリストがあったりしてゼロスは、違う意味で目を丸くするのだが、確かにアンジュの言う事は的を得ていて、やるまであのコレットとはまた違って意味で天然な王女は依頼を下げず、己に迫ってくるのだろう。加えて「お願いね」と笑顔を向けてくるアンジュには勝てるはずも無く。
「はい……」
と、ゼロスは返事をしてしまうのである。
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