輝く物語

□嫉妬と始まりと
1ページ/3ページ


「この……お前らみたいな地位も無い人間は俺たちの言う事を聞いてればいいんだよ!!」

「……んだとこら」

今日も今日とて、下町では事件が絶えない。
ゼロスに傍に居る事を許され、ゼロスのいる屋敷に勝手に入り込んだりすることの多くなったユーリであったが、合いも変わらず下町では横暴を繰り返す馬鹿な貴族騎士が多く、今回もユーリはありもしない多額な徴収を行おうとする騎士に対して口を挟み、その結果下町の人間を人間と思わない、人として信じられない言葉を発した男に対し血管が切れそうな思いをしていた。

貴族の全てがこんな馬鹿な奴ばかりでは無いと言う事はゼロスと知り合ってから新たに知り、貴族と言うものについて認識を改めたユーリではあったが、こういう自分勝手で己の事しか考えない馬鹿が多い事も事実。
まるでゴミか家畜のようにしか考えていないのはその見下すような瞳を見れば一発で分かり拳を握りしめた。
そうなれば、どうなるか。


その貴族騎士は、今回初めて下町への徴収についたらしく。その任務に不服と感じていた中での騒動。更にユーリ・ローウェルと言う人物を全く知らなかったのがいけなかったのか。
それとも今日、ゼロスの所に遊びと言う奈の勝手な護衛に行ってみれば、急に城の方で呼び出されていて会えなく、門前払いされユーリの機嫌がそれなりに悪かった所でこの騒動だったのが行けなかったのか。

「お、良く見りゃお前、女みたいな顔してんなぁ。お前、俺と遊ばねぇ?」

更にユーリの禁忌と言われるワードの一つである言葉を相手が口にした瞬間、ユーリの瞳から薄暗い黒い光が鋭く走ったのである。





















嫉妬と始まりと

























「全く、ユーリ。……お前ほんとに何回廊下はいりゃ気が済むんだよ」

「そう思うなら、シュヴァーン隊が下町に来ればいいだろ」

「そうしたいけど、今月は俺たち城内警備と外部演習で人取られてんだよ」

冷たい石の感触。
その後、ユーリがどうなったかと言えば高笑いをする貴族騎士に足を引っかけ、そのままその場で尻もちを付かせ、更にその手から落ちたナイトソードを奪って反論を口にしようとするその男の目の先に付き立ててやった。
目を丸くして恐怖を映す瞳に「まだ言いたい事があんの?」と目の笑っていない笑顔で冷たく問いかければ覚えていろと何度聞いたか分からない捨て台詞を聞きつつ男は尻尾を巻いてその場は解散。


……そして一時間も経たないうちに騎士を大勢引き連れてユーリを捕えに来たのだ。
そんなに早くに行動をとれるなら他の所にその能力を使ってくれと思いつつ、下町で暴れられては他の住民にも被害が及びかねないと大人しくお縄に付いてやる事にしたのだ(この騎士どもは下町も草原もそんなに変わりは無いという行動を普通に取りやがるのだ)。

そして乱暴な扱いで牢屋に押し込まれ、暫くののちに見知った声の男。
アシェットと名乗った男はユーリが昔騎士団に居た頃に一緒に馬鹿をしていた男の名前で。
最初は「俺おれ」と、名前を言わない男にお前誰だ、兜を脱げときっぱり斬り捨てればそれもそうかと名前を名乗ったのだ。話の中で今はシュヴァーン隊と言う、平民が多く在籍する隊に所属しているらしい事はわかった。
因みにこのシュヴァーンと言うのも平民出身らしく、ユーリ含め下町の受けもそれなりに他の隊に比べたら対応もいい為に言うのだが。
その事を思い出してアシェットに要求すれば、アシェットは肩を竦めると、現在の状況を口にした。

何でも隊長であるシュヴァーン隊長が騎士団長閣下のお達しで魔物討伐を兼ねた演習を指揮しており、
そこに他の隊騎士も取られているらしい。
特にそこまで聞く気もなかったのだが、アシェットから言われる言葉をユーリはふぅん、と適当に聞き流しながらに硬いベッドに背中をぶつけるようにして横になった。







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ