光と闇
□guardian
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「最近、隊長おかしくねーか?」
その一言、その一言から全ては始まったと言っても過言では無かった。
guardian
まず、気になってしまえばそれを無視できる隊員はシュヴァーン隊にはいない。
隊の詰所、そこで今しがた隊の様子を見に来てくれたシュヴァーンにそこにいた全員が揃って敬礼し、苦笑いをしながら「今日も民の為に頑張ってくれ」と、己の名声では無く市民を大切にする労いの言葉に、これまた全員が毎度の事ながら感動し、この隊長について来て良かった、と再認識する、と言う朝の恒例行事を終えて。
ルブランと他の小隊長も一斉にシュヴァーン隊長から貰った本日の予定の紙をみてそれぞれの小隊のメンバーに仕事を割り振る。その最中にぽつりと隊員の一人が口を開いた。
その言葉に、割り振っていた小隊長も敬礼と返事で担当になる仕事を確認していた兵士も一斉に静まった。
しかし。
「……そう言えば、最近、どこか居心地悪そうだよな」
「何か、脅えてるって言うか、きょろきょろする事多くなったって言うか……」
「書類見てため息ついたり、返事が曖昧な時もあるかも……」
次の瞬間には、その兵士の言葉に心当たりのある他の兵士もざわざわと思っていた事を口にする。過去、シュヴァーンがレイヴンと言うギルドに身を置くナンバー2として席を持っており、アレクセイの反逆に自分の罪も罪だ、と除隊と罪を課して欲しい、と願い出て却下され戻ってきた後直ぐのような、考え事に全てを持っていかれている状態。
あの時のシュヴァーンは考え事をしていたのか、指示を出しながら歩いて柱にぶつかったり仕事は確実に迅速に、と定時の時刻に遅れる事の無い彼にしては珍しく時間を超えてしまったりとしていた。
その時の状態から見れば、ここ最近は良くなっていたのだが、また最近になって、その時のような兆候が見え隠れしていてシュヴァーン隊は不安に声を上げた。
また、隊長がどこかに行ってしまうのではないか。と、今度は自分達の元に帰ってこないのではないか、と。そんな不安が募れば、その不安の矛先はシュヴァーンに寄り接する事の出来る小隊長達に集まるのはごく自然な流れな訳で。
「済まないが……無いも聞いてはおらんなぁ……」
互いに視線を合わせてから代表してルブランが口にすれば、全員がうなだれたように空気が暗くなった。
「だが……確かにシュヴァーン隊長に元気が無いのは確かに気になる……少し探りを入れてみよう」
しかし、そうルブランが言葉を続ければ、あからさまに元気になる隊員に、ルブランは苦笑いをしながら手を大きくパンと叩いた。
「さぁ、おしゃべりはこの辺で終了だ!!今日もシュヴァーン隊の誇りにかけて全力で帝都を守るのだぞ!!」
そして更に大きな、部屋に響き渡る声で怒鳴れば隊員は慣れたように足を揃え、敬礼を取るのである。
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