光と闇

□My Dream
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「ねぇ、レイヴン。レイヴンの夢は何?」

「俺様?俺様の夢は……また、夢を見る事が出来る事、かねぇ」



そんな事を思っていたのは、オルニオンで夜空を眺めながらぽつりと口から出た真実。
どんな夢を持ちたいのか、漠然としていて正直、10年単位で考える事を放棄した頭では考える事も出来なかった。
そう、その時は。
だからこそ、カロルに聞かれてレイヴンは素直な気持ちを口にしていたのだ。


















My Dream














世界は、魔導器を必要としない世界へと変わり始めている。
既に4体の元素を司る大精霊を味方に付けたユーリ達は希望に向けて、最後の砦、タルカロンへと足を進めていた。
その中で、レイヴンはぐっと己の胸の位置……埋め込まれた心臓魔導器を掴むように服を、前を進む一行に気が付かれない様に握りしめた。
この心臓は、魔導器。
つまり……全ての魔導器を精霊化すると同時に、己の心臓も精霊へと昇華されるわけで。
その事にリタもいち早くに気が付きどうにかしようと夜中も寝ずに魔導器の書物を漁ったり、エステルと精霊に交渉を頼んでいたりしていたのをレイヴンは知っていた。
そして、その方法を見つけていた事も。

「これでおっさんの心臓は大丈夫よ!」

と、頬を紅潮させて抑えきれない喜びを必死に隠しながら言う少女に、「ありがとう」と苦笑まじりに言ったのだが。





「大丈夫ですか?レイヴンさん。……辛そうですけど」

「……ん?大丈夫よ、これくらい」

長い長い、どこまでも続く階段。
ひたすらに上りながらに魔物と戦うのは、体力の消耗も激しい現実があるのだが。
それでも早くに頂上へと登り、全ての人間を滅ぼし世界を再生させようなんて考えている馬鹿な男を止めなくてはとそれぞれが強い思いを胸に進んでいた。
その中で、一番後ろを歩くレイヴンの様子に気が付いたのか、フレンが後ろを振り向けば少しだけ歩調を緩めて心配そうに問いかけて来た。
彼、フレン・シーフォがレイヴンの事を誰よりも心配するのは、レイヴンのもう一つの顔が彼の最も尊敬の念を抱いていた人物だと言う事もある……と言うよりはそれが原因で。
共に戦闘すれば、終わりざまに「やりましたね、シュヴァーン隊長!」と笑顔で何度修正を訴えても直しもせずに言う所からも分かってしまう。
心配をにじませる視線に、軽く手をひらつかせるとレイヴンは一度息を大きく吸ってから一足飛びで階段を飛び越えて進みだした。

「それに、この状況で大丈夫じゃない、なんて言えないじゃない?」

「それは……」

「このままじゃ、生命力を奪われてみーんなお陀仏。そんなの許せないっしょ?」


「……はい」

そう、世界の命の命運は全て、タルカロンに向かう自分達の行動で決まるのだ。
ここで、しくるわけには、いかない。

にっこりと笑みを浮かべてレイヴンがまだ先の見えない頂上を見つめれば、釣られるようにしてフレンも上を見上げた。
そこに、負けると言う不安は全くない。

だが、フレンは、何か、とてつもなく嫌な予感がその胸に走るのを押さえずにはいられないでいた。
何かが起きる。

そう思ってはいるがそれが何かは分からない。

先程の勢いのままに一足飛びで一番前を進むユーリの元へと向かった紫の羽織を見てフレンはぐっと唇を噛んだ。






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