無意識に眼が勝手にその人を追ってしまう

あの方が、眼に写る範囲にいないとつい探してしまう

あの方が、話している声が聞こえるとつい視線も耳も向いてしまう


それは彼が皇帝で、守らないといけない対象だから。
見える場所にいないといつ暗殺などの危険にさらされるかわからないから。
話を聞かないと勝手にどっかに脱走してしまうことがあるから。

最初はそう思っていた。
……だが、違っていた。










だって、俺はついに……夜中に、かの人を抱く夢を見て…夢精して、…しまったから。




これは、これは。
どう考えたって。






「好きになってんじゃないの?その人のこと」

「やっぱり…そうなのか…」

アニスに誰かを隠してその状況だけを伝え相談してみれば、ばっつり言われてしまいガイは、いろんな意味でがっくりと頭を垂れた。

―ーーあぁ、なんてこった。


ガイは思い人のことを考えて頭を抱える。

「に、してもなんていうか…ガイの好きになる人ってどんなひとなのさ?」

首をかしげたアニスにガイは流石に男で年上の人なんて言うこともできずに、ただ苦笑いを浮かべた。






大人のは無糖

ガイ×ピオニー


















「おーよしよしよし、今日も可愛いなぁ、んん?」

わっしわっしと散歩から帰ったぶうさぎを幸せそうに撫でるのはこの国の皇帝。ピオニー・ウパラ・マルクトその人で。
机には今までやっていたのであろう書類と印籠、ペンなどが無造作に置いてある。
それを見て今日は(今の時間までは)まじめにやっていたのだなとガイは思う。


ぶうさぎを撫でるこの方がルークに勝る脱走癖を持つ方であると知ったのはこの国についてから。
ルークは顔に良く出るし、脱走するにしたって行き先がないからすぐに見つかった。

しかしこの方は違う。
天真爛漫・神出鬼没。
つい今しがたまでおとなしく部屋にいたかと思えば、ふと目を放した隙に部屋から消え、宮殿のどこかで寝ていたり、街下にまで出て行ってしまうのだ。
その行動範囲のすごさにふり回され、くたくたに疲れて死んだように眠った最初の頃が懐かしい。
ルークより年上でお守なんて言葉が違うであろうにその言葉がしっくりと来てしまう。

でも、そんな行動があっても。
陛下として国を治める際は確かに皇帝の顔で。

誰よりも国を憂い、愛するお方で。
そんな二面性にガイの心は大きく揺さぶられ、気持ちが大きく傾いてしまった。

「お、どうしたー?ゲルダ、寂しいのか?」

ふとすりよってきたゲルダと名付けられたぶうさぎと戯れる陛下を上から眺めながらガイは思う。








今、この方に抱きついたら、どうなるのだろうかと。
今、彼の体を押さえつけてキスをしたら、どうなるのかと。















…………今、彼をベッドに連れ込み自分の欲望のままに彼を抱けたら、と。




「どうした?ガイラルディア?」

ふと、じっと見詰めていると彼が此方を見上げた。
ふと自分の気持ちがばれてしまったのかと眼を丸くするもガイはすぐに笑みを向ける。

「いえ、どうもしてないですよ。それより陛下、仕事は…」

「今までしていたんだ、今はこいつらと戯れる時間なんだ!」

聞こうとする前にすぐに言葉を重ねられてしまい、ガイは苦笑いを浮かべた。
この方は一度言うと聞かないのだ。
その性格はあのジェイドであってもそうそう変えられないというのだから自分にはどうしようもない。

「今の時間帯が過ぎたら、また仕事をしてくれるんですか?」

だから、そう聞いてみると。
彼は自分のほうを振り向いて。

「そうだな。この後に、お前とも遊んでから、な?」






そんな事を言ったら、変な期待。
……しちゃうじゃないですか。






にっこりと笑いながらこちらに手を伸ばしてくる陛下にガイは、ゆっくりと手を伸ばした。
その、手のぬくもりがガイの手袋越しに伝わってくる。

「陛下……」

つい、その手を強く握ってしまうとガイは無意識に自分のほうに強く引き寄せた。


……はず、だったのだが。










「う、うわぁあああああ!?」

よせたのは、可愛い可愛い彼のぶうさぎの……ルークで。
ついでに頬にねっとりとした感覚。

きっと、いや確実にルークの鼻水だ。
それに奇声をあげて離れるとピオニーは声を上げて笑った。


そして。

「だから言ったろう?こいつらと遊んだ後だと」


そういったピオニーに、ガイは自分の頬を押さえながら困ったように顔をゆがめた。
その様子を見ると、満足したように笑顔でガイから顔を反らした。









「知ってるか?ガイラルディア。大人の恋は子供のようには甘くはないんだぜ?」



後ろを向いたピオニーから出た言葉に、ガイは目を丸くすると、次には目じりを下げた。
そして頭を軽く掻くともう一度彼のすぐ横にしゃがみこんだ。


「……覚えておきます。でも覚悟もしておいて下さい?」

そう答えると、ピオニーは一度目を丸くした後に豪快に笑ったのであった。








―――――――――――



今回はガイオンリーと言う事で、つい参加させていただいちゃいました!!
しかもガイピオと言うマイナー道まっしぐらなカプかも知れませんがちょっとでも楽しんでいただけると嬉しいです!
それから期限ぎりぎりで申し訳ございませんでした!!

主催のはぎあ様、共催のMido様!
この度は素晴らしき企画に参加させていただき有難うございました!!




かび花拝



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