NL NOVEL
□死神の夢衣ちゃん
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宇奈月 夢衣:うなづき むい
日向 夜人:ひゅうが よると
日向 ひなた:ひゅうが ひなた
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「私が貴方を変えてあげる」
いつもどおり、ベッドに横になり漫画を読んでいた俺の前に、一人の女の子が現われた。
「うわっ、誰だお前」
「私は夢衣。宇奈月夢衣。よろしくね、日向夜人君」
にっこりと微笑み、近付いてくる相手に、無意識のうちにあとずさっていた。
「なんで、俺の名前…」
「そんなことはどうでもいいじゃない。夜人くん、二重人格でしょう。私がそれ、治してあげる」
そう。俺はこいつの言うとおり、二重人格だ。
昼間起きているときは俺、夜人だけど、深い眠りにつくとひなたが出てくる。
ひなたは甘えん坊で、一人ではいられない性格らしい。
いつも起きたら、知らない奴が隣にいる。
最近では、それが恐くてよく寝付けないでいる。
「本当に治せるのか?」
「もちろん。私に任せて」
「なら、ぜひ頼む」
俺は気軽に返事をしてしまった。
後で、後悔するとも思わずに。
「じゃぁ、そこに横になって目を閉じて。すぐに楽になるからねー」
俺は言われるがまま従った。
「ふふ、有り難くいただくわ。……貴方の命」
今までに比べ低く小さな声を聞いた瞬間、鋭い痛みに襲われた。
「ここ……は?」
「初めましてだね、夜人」
同じ顔をした俺がにこりと微笑む。
「お前は……?」
「ひなただよ。いつも一緒にいたのにぃ」
なぜ、俺は今ひなたと話をしている?絶対無理なはずなのに。
これは夢なのか?そうか、あの夢衣ってやつの…。
「夜人って馬鹿だよね。気付かなかった?あの、宇奈月夢衣って子、死神だよ?僕達みたいに二重人格だったりすると、魂が高く買い取られるの。だから、狙われちゃったんだね」
「それって、どういう意味だよ?!おい、ひなたっ」
「死んじゃうってこと。もう僕達は一緒にいられない。夜人は一人になるんだよ。望み、叶ってよかったね。もう、二度とあえなくなるんだよ…」
自分の顔が青ざめていくのがわかった。
俺の、単純な性格。簡単に答えてしまった愚かさ。
俺の何気ない言葉でひなたまで、殺してしまった。
「もうお別れだよ。今までありがとう。今度は一人で、のびのびと過ごして」
目の前から、ひなたの姿が消えていってしまった。
俺は何もしてやれなかった。
いや、ひなたのことを考えてもいなかった。
「うわぁぁぁぁぁ……」
暗やみに一人残された俺は、狂ったように叫びだした。
不意に声が聞こえた気がした。
「ふふ、ありがと、夜人。これで私、一人前の死神になれるわ」
そう、夢衣の言葉が聞こえた気がした。