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□俺様彼氏
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「おい…。俺の足の指1本1本まで舐めてみろよ」
「えっ…?」
俺様彼氏
「…って俺が言ったらどうする?」
「リアルに言いそうで怖いわ…」
休日の午後。
外では家路につく子供の声がする。
私は雑誌を、読むでもなく眺めるでもなく、ただめくっていた。
その側で彼氏の啓太が、手持ち無沙汰そうに携帯をいじっていた。
そんな、ぐだぐだでいて穏やかな時間が、ここには流れていたのに。
突然彼が放った言葉に、後頭部がずきんと痛んだ気がした。
ハンマーで殴られたような衝撃。
足の指って…一体何事だ。
「愛の確認作業」
「今のが!?」
「そ。結果、俺って愛されてねーなあって思った」
「ばかじゃないの?」
「ばかじゃない」
「…あっそ」
音を立てて雑誌を閉じると、彼も派手に音を立てて携帯を閉じた。
そして、つまんねー午後だな。と、独り言なのか、私に対してなのかわからないけれど、ぶっきらぼうな台詞を放った。