short

□すき
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部屋の中を二酸化炭素の薄い膜が覆っているような感覚に包まれて

自分の上から体温のかたまりが剥がれるのを感じて

浅く、ひとつだけ深呼吸をした。






* すき *






体を重ねた後、ぐったり自分の横に倒れこむ彼は、格好悪いといつも思う。

深い呼吸を何度も繰り返して、私の頭をたまに撫でるけど

その腕にもなんだか力が入っていなくて、やっぱり格好悪いと笑ってしまう。

だけどそんな彼が、わたしは好き。



私の頭をぐしゃぐしゃにした後、彼は腕をぐっと私のほうに伸ばして「ん、」と頭を乗せるように促した。

だけどなんだか頭を動かすのもだるかった私は、あとででいいや。と彼を見ながら言った。

彼は仕方なさそうに腕を自分の頭の下に戻す。



「なんか最近ヤった後の脱力感が半端じゃない」

「知らないわよそんなの」

「年かなー」

「やめて、ムードが壊れる」

「はいはい、」



彼はうーん…と唸りながら伸びをして、薄く目を閉じた。

寝るつもりなの?と聞くと、寝てほしくないの?と目を閉じたまま返される。

…眠いんなら寝ればいいじゃない。

私が別に。と言うと彼はくすっと笑って目を開けた。


こうやって、彼に全て見透かされている自分が嫌。悔しい。

いつか絶対言い負かしてやるんだから。

だけどそんなチャンスは付き合ってきたこの数年間で、一度も巡ってきたことはない。


ぬくもったベッドの中で、足をもぞもぞ動かす彼。

そんな彼の足を自分の片足で、上からバシッと押さえてやった。

彼は半笑いで顔だけ私のほうに向けると、お前足冷たっ。と苦笑した。
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