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□未完成なぼくら
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未完成なぼくら
よく「片割れと比べられて嫌だった」と嘆いている双子を見るけれど、私は自分が双子であることを生まれてこの方一度も嫌だと思ったことはない。
香坂澪と、私の姉の香坂鈴。私達双子は近所の人からもとても可愛がられていたらしい。
幼いながらもご近所さんとはとても仲良くやっていたのを、なんとなく覚えている。
スズと私は一卵性双生児で顔もほとんど相違がなく、両親でもたまにどちらか間違えてしまうくらいに似ていた。
私はいつもスズと一緒だった。だからいつも、スズと一緒のものがほしかった。そしてスズもまた、いつも私と一緒をほしがった。
頭の出来も同じくらい。髪型だっていつも一緒。そんな私達は「違いを比べられる」ということを知らずに成長したのだ。
だけど高2の春、私はスズとは違うものをほしくなった。
――小宮山恭平(コミヤマ キョウヘイ)
私たちが「キョウ」と呼ぶ彼とは、生まれたばかりのときからずっと一緒の友達。いわゆる幼馴染だ。
家族ぐるみの付き合いは、私たちが生まれて17年以上経った今もなお続いている。