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□痛い痛い愛をください
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連続恋心奪取事件のふたり
「痛てぇだろーなぁ…」
私に覆いかぶさって、少し哀れみの表情を浮かべながら、彼は言った。
ぽとり、と彼の言葉が頬に落ちて体に染みて、恐怖心が煽られる。
「……痛いの、かな?」
「さぁ…。俺男だからわかんねーけど」
「……こわいよ」
「大丈夫だって」
ここは、由和くんのお部屋。
由和くんのベッドの上。
甘いムードで抱きしめあって、どちらともなくキスをして、気付いたらこうなっていた。
私に馬乗りになった由和くんは、そのまま顔を近付けて瞼にキスをした。
くすぐったくて目を閉じたら、その隙に今度は唇を深く深く奪われた。
由和くんの前髪が顔に触れて、そっと目を開けたらすごく真剣な眼差しの彼が居た。
そして、冒頭に至る。
「俺がんばるよ」
「頑張る?」
「うん。清香が痛くないように」
珍しく柔らかい口調でそう発した由和くんに、抗うことなんてできなかった。
「だから清香の初めて、俺にちょうだい」
胸の奥がきゅんと疼く。
言われなくても、由和くん以外の人になんかあげないよ。
私が黙って頷いたら、由和くんはふんわりと微笑った。
ムードも、思い出になるような甘いきっかけもなかったけど。由和くんとだったら、もうなんだっていい。
「あ、でもなー…」
「ななな、なにっ!」
「大好きな子としてんのに、痛くないように気遣う余裕なんかあるかな」
そんなことサラっと言ってのける由和くんが、たまに憎い。
私がどんどん彼にはまっていくことをわかって言ってるんだろうか。