short
□眼鏡
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「今本読んでんだけど」
「今日ずっとじゃん」
「どうしてほしいの?」
「かまってよ」
ソファーに身を投げて、本を読む彼のお腹の上にダイブ。
本を少し横にずらして、彼は怪訝そうにわたしを見た。
本を片手で持ち、反対の手で私の頭を撫でる。
「ごめん、今佳境だから」
「読み終わるまで乗ってる…」
「うーん…まあいいや」
彼は私のわがままをビシッと諭したりできなくて、いつも困った顔で笑って私の全部を許容する。
感情的になった姿なんて、今までほとんど見たことがない。だから私が、こんなわがまま女になってしまったんだけど。
世に言う「草食系」なんだと思う。私と付き合うまでは、好きな人もできたことがなかったらしい。
だからたまに不安になる。本当に私を好きなのか。