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□おいてきぼりキャット
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「…何コレ」
わけわかんなーい。
手元には、たくさんの数式が並んだプリント。
先生が急な出張に出かけてしまい、数学の課外が自習になったのだ。
8時間目。眠いし。
黒板に大きく書かれた「自学」の文字。
…じがくってなに。
「まみー、これ提出しないと帰れないらしいよ」
隣の席の洋子が、プリントをぞうきんでも扱うかのように摘まんで言う。
よく見るとプリントの端に「職員室の本田先生に自分で渡して帰ること」と記載してある。適当にばっくれて帰ろうと思ってたのに…。
げぇー、とげんなりした顔を見せると、洋子は私の顔を見て吹いた。そんなに変顔だったんだろうか。
「どーしよ、わたし数学苦手なのに」
「じゃあさ、みんなで協力してやろーぜ、これ」
私と洋子の会話に、私の前の席の孝太がくるりと振り向いた。
孝太は数学が得意らしい。理系の大学に進学したいって言ってたし。
それに孝太は、私の好きな人。
私はこんな素敵なチャンスを逃がすような馬鹿ではない。
特進クラスにいながら、頭は悪いけど。