short

□最低で最高の人
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「何しに来たの」

「そりゃあ、ナニしに来たの」



デスクの上のバッグを引っつかんで保健室を出ようとしたけれど
彼は私の肩を片手で掴んでいとも簡単に自分の腕の中に私を引きずり込んだ。

必死でもがいて逃げようとしても、彼の力は意外と強くて、私の力だけでは敵わない。

彼は、保健室のドアにかかっている「在室」の札を片手でひっくり返して「外出中です。用事のある生徒は職員室まで」という表示にする。
そしてドアを閉め、ガチャンと中から鍵をかけた。



「もー逃げらんないよ」

「も、やだ…!」

「俺、今日も残業なんだよね」



彼は私の白衣に手をかけると、それをスルスルと脱がせて、後方のソファーに放った。
顔を5センチくらいまで近づけられる。ふっと笑う顔が悔しいくらいに綺麗で、身震いがした。



「昨日も一昨日も家帰ったらお前寝てるしさぁ……もう俺、我慢できないんだけど」



腰に手を回して、彼はより強く私を自分に引き寄せる。
地面から浮くようにして彼の胸に突っ伏すと、私をぎゅっと抱き締めた彼は、部屋の電気を消した。
 
 
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