一番上の引出し
□行き過ぎた愛故に
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近頃、家は慌ただしかった。
戦争が激戦化していくから、戦場に行ってるヤツらは帰ってこれないし。
そんな状況だったから、家はだいぶ慌ただしかったんじゃないかと思う。
その日は、久しぶりに全員揃った朝だった。
全員といっても、七番目だけは除くけれど。
「異能者捕縛適応法?」
五番……ミトラが新聞を読みながら語尾をあげる。
「へぇ、やっと可決したんだ。長かったよね」
リディ兄が納得したように呟くと、アウインが頷いていた。
流石に知っているだろう二人は、何か思うことがあったのか、動きを止めた。
「なんだ?それ」
「異能者捕縛適応法……通常よりも極めて高い身体能力を持ち、その力を使って悪事を働いている一部の異能者を捕まえる法」
ヴァルがボソっと口にした説明に、訊ねたファレクはふーん。と気にしない風でいたけれど、ミトラは首を傾げる。
「悪事働いてるなら、今まででも捕まえられたんじゃないの?」
確かに、そりゃあ今まででの犯罪者を取り押さえるのと同じじゃないか?
それでもこうやって可決、施行したというなら……。
「建前か?」
口に出せば、アウインが頷く。
「だろうな。異能者に何かある……まぁ、異能者を戦争に使おうとでもしているのか」
「それも、何の悪事もしていない、ただの異能者がね」
アウインとリディ兄の言ったことに納得したらしいミトラは、ふーん。と眉を寄せた。
「枢密院なんて、所詮そんなもんだろ」
適当に言えば、アウインからはおもいきり睨まれたけれど、実際それは本当だと思っていたから無視で返した。
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