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□ひとこと
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――かえしうた――













もう隣にはいない誰か。
もう君の隣にはいない誰か。
両方を失ったのは自分。
認めたくなくて、
ただ笑っていた。

辛いと思い始めた時にはもう手遅れで
やっと心落ち着いた時にも手遅れで
何故今はあの時ではないのかと、
何度も空を見上げた。

だから、
だから何もしないで空を見上げた。
そう、何もしないで空を見上げた。
それしかできない自分が、
ふがいない自分が、
心の底から嫌いになる。


全てを失ったとき、
やっと気づいたことがある。
それに気づいた時には、
やっぱり遅すぎて。
ただ、次に誰かに出会う時には、
間に合うはずだろう。
そうだろう?

伝えるんだ。
だから、伝えるんだ。

泥沼から這い上がって、
ハエを纏いながら、伝えるんだ。


間に合う、今、この瞬間に。
全てを、たくすんだ。








たった、ひとことに、全てを。




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