一番上の引出し

□行き過ぎた愛故に
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「異能者、か……高い身体能力なぁ」

朝食が乗っているテーブルに突っ伏したファレクが不思議そうに呟いた。

「異能者でなかろうと、自分らで鍛えりゃいいじゃん」

「所詮異能者を恐れたり妬んだりしてるのは、自分で努力しないヤツらだけなんだろうね」

ミトラが何かを思い出したか、苦い顔を漏らした。
そんなミトラの服をひっぱりつつ、ヴァルは口を開いた。

「……スパーダ」

は?
と首を傾げたのも一瞬で、すでに考えていたらしい兄二人は頷く。

「やっぱりヴァルもそう思う?」

「スパーダの剣技は努力の賜物だろう……が」

悩み始めた二人の言っていることが理解できたのか、できていないのか、ファレクは勢いよく立ち上がる。

「おい!」

「可能性の話だろ、飯食ってる時に立ち上がんじゃねぇよ」

そう言うと、渋々と座ったファレク。
やけに重くなった空気に小さくため息をつく。

「あー、なんだ?まぁ、スパーダが捕まるなんてことはないだろ」

スパーダの身体能力は、実際アウインより高いと思うことがある。
そのスパーダが簡単に捕まるとは思えない。

「……そうだな。ところでスパーダは?」

ファレクが呟いた疑問に、リディ兄が薄く笑いながら答えた。

「どうする?喧嘩してるところ見つかって、王都兵に捕まってるかも」

そんなリディ兄に、アウインは軽口を許さないとでも言いたげに不機嫌を顕にする。

「生活を改めさせるか」

そうだね。とヴァルとリディ兄が笑うのを見ると、スパーダが少し憐れに思えたけれど、それは仕方ない。

「じゃ、オレはスパーダに的にでもなってもらうかな」

手首を振りながら言えば、ヴァルは小さく反抗した。

「……スパーダは、僕の実験台」

物騒なことを呟くヴァルに、ファレクは思い出したかのように立ち上がる。

「そういえば!頭の良くなる薬作れたか!?」

「何度も言うけど……無理」

何度言おうとも立ち上がるファレクを見て、アウインは小さくため息をつく。

「スパーダが帰ってこないのは、コレが原因じゃないのか」

恐らく正しい理由なのだけども、それを知りつつも誰一人スパーダに対する態度を改めないあたりが、似たもの兄弟だな。と笑う。


そんな時に、ドアが思い切り開いたのだ。



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