落とし物

□エンドレスリピート
1ページ/1ページ



俺の兄はいつも笑っている。
何も考えていないような顔でヘラヘラと笑い、毎日近くの歩道橋か、車の流れを眺めている。
今日もいつもと同じ表情でどこからか拾ってきたらしい猫を抱えて笑っている。

「チビ助の心臓も動くのか。大変だなー」

何が大変なのか、あたり前のことを言うと、猫と同じような背中をぐにゃりと曲げて目を閉じた。
友人にも似たような奴がいたな、と毎日屋上への階段をのぼる男を思い出す。
何をしているんだと訊ねれば、鳥の心臓も動いているのか、と呟いて柵に体を預けて空と同じ色の鳥を見上げる。
毎日毎日、レコーダーのようにそれを繰り返している。

「ひーろし!チビ助のこと見ててくれー」

そう言って外に出ていく兄に猫を預けられた瞬間、血管からドクドクといつもより大きな音がした。しかし、それはすぐに

──なぁ。

気の抜けた鳴き声で腕の中にいるこいつの心音だと理解できた。俺の腕から逃げ出して兄の背を追いかける。

なんてわかりやすい結末だろう。

チビ助、と呟いて流れる赤を見つめる兄の表情は泣きかけているくせに、猫の心臓のある部分を羨ましそうに見た。



それからも変わることなくヘラヘラと笑う兄は、今日も歩道橋に車の流れを見に行った。

のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。





──それは確かに、永遠ではないけれど。
─────────────
原稿用紙に書いたのと比べると改行とかしまくってるんですけど……うーん。
あー。
わからないです。
とりあえず影響を受けた作家さんはいます。はい。

(20100207)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ