塵の結晶
□明日へ
2ページ/6ページ
「って、言ってもなあ……」
実は、ただ年末年始がバイトづくしで、祖母の家に帰れないだけなのだ。
家族は、みんなで遊びにいってしまったので、家にいるのは自分だけ。
いくらなんでも、1人で年を越すのは寂しすぎる。
だからこうして、静かな場所に、何かを求めて歩いてきた。
初日の出を、誰と見るわけでもない。
ただ、なんとなく、誰もいなさそうな丘から、ただ静かに初日の出を見たいだけだった。
そこで、彼女に会った。
都合のいいことに、彼女も1人だった。
ワイワイ叫びそうなタイプでもない。
そろそろ明るんできそうな空を、僕らは一言も喋らずに見ていた。
そっと、声がした。
「あなたは、何をお願いしにきたんですか?」
いきなりだったもので、僕は少し驚きながら、聞き返した。
「君は?」
「質問に質問で返すのは、人間としてどうかと思いますよ」
……彼女は、間髪いれずにそう返していた。
感情のこもっていない声は、それでも不安に押し潰されそうに聞こえた。
「そうだなあ……」
これは困った。
僕は別に、初日の出に願をかけようと思っていたわけじゃないから、とっさに答えが見つからなかった。
,