塵の結晶
□状態変化
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「なぁ」
俺は声をかけた。それはもう、何度もかけた。
「なぁ」
しかし、相手が反応する気配はこれっぽっちもなかった。
「なぁ」
「はぅ〜」
俺とは関係のないことで奇声を発してはいるが。
その奇声すら間の抜けた声で、こちらとしてはもう少し芯の通った声を出して欲しい。
「亜弥ぁー」
名前を呼んでみるも、返事はない。
「亜弥さん?」
再び呼んでみるも、返事はやはりない。
ここまで無視されると、本当にコイツはここにいるのか、俺はここにいるのかが分からなくなってくる。
「ハゲ」
途端、俺の頭上にたんこぶができた。
亜弥を見るも、先程と何も変わらず、ただほわほわと重心を失ったような顔をしていた。
俺は、少しテストをしてみる。
「亜弥」
反応はない。
「大魔王」
頭上に衝撃。
「女王様」
やはり反応はない。
「美人で、かわいくて、清楚で、可憐で、お嫁さんにしたいナンバー1の亜弥様」
「なぁに?龍ちゃん」
コイツの生体が分かってきたぞ。
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