塵の結晶
□後退りする速さで
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「けーんいっちさんっ」
桜は跳び跳ねながら健一の背中に抱きついた。
健一は「うわっ」と驚いた声を出しが、嬉しそうに笑いながら尋ねた。
「桜さん。どうしたんですか?」
桜は健一のその言葉に頬を膨らませた。
口をとんがらせて文句を言う。
「なによ。せっかく花の女子高生が抱きついてるっていうのに、健一さんは嬉しくないの?」
それに少し困ったような笑いをしながら、健一は桜を背中から取り外す。
「嬉しいとかじゃなくてですね」
「しかも敬語だしー」
プンッとそっぽを向く桜の扱いに慣れている健一は、その頭を優しく撫でる。
桜の機嫌が少しだけなおった所ですぐに机に向かった。
「さて、勉強しましょう」
眼鏡ケースから、シルバーの細い眼鏡を取り出して、そう言った。
桜も少し不満そうにしながらも、以前出された宿題を取り出した。
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