塵の結晶
□アルカロイド
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その少年は、この国の王子でした。
少年は、もう王子ではなくなってしまったのです。
苦しみは、痛みは、哀しみは、涙は、少年を助けることを知りません。
新しい王子は、少年を殺すことをしませんでした。
部屋に閉じ込めておくだけで、何もしないままです。
人形へと変わる少年を見かねた少年の執事は、ついに少年に薬を手渡しました。
少年の身を、簡単に壊すはずであった劇薬は、しかし少年の命を絶つには足りません。
人形となっている少年は、中身のないその体で、暗い瞳で、ずっと外を見ています。
逃げることも、飛び降りることもしない少年は、ずっと外を見ています。
そして、その瞳に光りが宿りました。
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