小説「あけぼし」


□あけぼし
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ミヨが玄関先に腰掛け
風呂敷を広げていると
奥から藍の浴衣を来た
"美しい人"が現われた。

腰ほどの長い黒髪を無造作に束ね、
線の細い華奢な身体に、
透ける程の白い肌。
異国人を思わせる
その人こそ、ユウである。

「お身体の具合はいかがですか?
今日は旦那様の使いで来たんですよ。」
ミヨが久し振りの対面に
顔をほころばせる。

「ええ、近頃少し良くて。
ミヨさん、それは…何ですか?」
ユウが静かに膝を付き、
風呂敷の中を覗きこむ。
ミヨは丁寧に
淡い若葉色の着物を取り出した。

「旦那様からユウ様に、と。」

「そんな、着物ならもう既に
頂戴したものがたくさん。
もったいない…。」
困った顔を見せるユウに、
ミヨは続ける
「いいえ、去年に羽織りを
お仕立てして以来何も。
どうか受け取って下さいませ、
旦那様に任されて
ミヨが見立てたお色なんですよ。
年寄りの頼みを聞いて下さいな。」


「そんな…」
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